■量子コンピューティングとアダマール行列(その21)
量子コンピュータは(2^n)x(2^n)行列の乗法を提供する。高速因数分解の問題を解くことができるため、現在広く使われている公開鍵暗号が破られることを意味している 。
昨年秋、数学月間の会@東大・駒場で講演した際、量子コンピューティングの話を拝聴した。その際の
[参]Flarend, B. Heilborn(2022), Quantum Computing, Oxford
の一文を掲げてみたい。
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このように、n=10のn量子ビットならa0〜a1023の係数からなるエンタングル状態を作り出すことができる。n=20、さらにn=100,n=1000・・・ならどうか?
この量子ゲート、量子回路の機能は、もし実装されれば空恐ろしい程度となる。量子コンピュータができたとしても、それは「並列処理」によるものではない。
実装は途方もなく困難といわれる。電子のスピン上で実装するとしても、スピンのエネルギーは極めて小さいため、熱雑音からのSN比を大きく確保するためには、deviceを絶対零度近くの超低温に置く必要があるが、それでも保証の限りではない。汎用的実装は当分無理であろう。Kurzweilも2040年代半ばのsingularityでも幼児的段階と予想している。しかし、絶対的不可能というわけではないので、到達不能なRSA暗号も解読可能な計算力の前では解読される可能性がある一方、むしろ暗号化に役立つかもしれない。
RSA暗号が解読可能となれば、今日のコンピュータ人類文明はたちどころに崩壊する。通信システムはすべて他者に明らかになって効力を失い、金融システムの安全性は地に落ち、経済取引は対面の物々交換の古代以前に戻り、サイバー化している世界安全保障システムは作用を完全停止し、古代文明の再現となる。はたしてどうだろうか?
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