■abc予想(その2)

【3】メーソン・ストーサーズの定理の類似(abc予想)

 多項式に対するフェルマの最終定理の類似はわかったが,それでは整数に関するメーソン・ストーサーズの定理の類似はどうなるのだろう? この代数幾何学と数論の相互転化がどのような形になるのかを知る人はたとえいたとしても非常に少ないであろう.

 mの素因数分解を

  m=Πpi^mi

とすると,多項式の次数degに相当するものは

  logm=Σmilogpi

互いに異なる根の数に相当するものは

  R=Σlogpi

と定義するのだが,互いに素な整数でa+b=cを満たすものすべてについて,不等式

  max(|a|,|b|,|c|)≦R(abc)

は一般に成り立たない.

 また,

  max(|a|,|b|,|c|)≦K・R(abc)

が成り立つような定数Kも存在しないのだが,不等式を弱いものにした

  max(|a|,|b|,|c|)≦K・R(abc)^(1+ε)

が成り立つと予想されている(abc予想,1986年).

 ほとんど証明抜きでスケッチ程度に解説したが,abc予想は数論と方程式論の両方にまたがる20世紀における最高の予想のひとつとされる.

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