■無限級数の問題(その2)

 無限級数:Σ(−1)^k =1−1+1−1+1−1+・・・

は奇数番目まで足して1、偶数番目まで足して0になります。0と1の中間で1/2というわけではありませんが、

f(x)=1+x+x^2 +x^3 +・・・=1/(1−x)

でxを−1に近づけたときの極限値と考えると1/2になってしまい、整数の和が分数という不思議な結果になります。

1−1+1−1+1−1+・・・=1/2

もちろん、この結論は誤りで、この展開が正しいのは|x|<1に限られ、xが1に等しいか、1より大きい正の数の場合には意味をもちません。x=−1のときこの級数は0と1の間をただ振動するだけですが、オイラーやライプニッツの時代にはかくもあやしげな公式が信じられていたようです。

 さらに、g(x)=xdf(x)/dx,h(x)=xdg(x)/dxを求めると、

g(x)=x+2x^2 +3x^3 +・・・=x/(1−x)^2

h(x)=x+2^2 x^2 +3^2 x^3 +・・・=x(1+x)/(1−x)^2

ここで、x=−1とおくと

P=1−2+3−4+・・・=1/4

1^2 −2^2 +3^2 −4^2 +・・・=0

が得られます。また、S=1+2+3+4+・・・とおくと

P=(1+2+3+4+・・・)−2(2+4+6+8+・・・)

 =(1+2+3+4+・・・)−4(1+2+3+4+・・・)

 =S−4S=−3S

したがって、

ζ(−1)=1+2+3+4+・・・=−1/12

という結果が得られます。

1+x+x^2 +x^3 +・・・=1/(1−x)と同様にして、

1/(x−1)=1/x+1/x^2 +1/x^3 +・・・

ここで、x=1/2とすれば、−2=2+2^2 +2^3 +・・・

負数が正の無限大に等しくなるというのはまったくの不合理ですが、古き良き時代のことであり、案外、自然に受け入れられたのかもしれません。

 このように、発散級数では非常に多くの逆説を作りだすことができます。これらの級数がどんな場合に等号が成り立つか、xにどんな制限をつければ有限な極限に収束するかを知るためには、数学を論理的に完全にすることがどうしても必要になりました。無限級数の極限値を求める数学は、その後、ガウスやコーシーによって精密科学への変革が成し遂げられました。

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