■対称行列と反対称行列(その14)
【1】リー群とリー代数(復習)
転置と複素共役を組み合わせた作用を(~)で表すことにすると,実数変数行列と複素変数行列の対応は以下のようになります.
実数 複素数
対称行列(A’=A ) → エルミート行列(A~=A)
直交行列(A’=A^(-1))→ ユニタリー行列(A~=A^(-1))
反対称行列(A’=−A )→ 反エルミート行列(A~=−A)
n次実変数一般線形群GL(n,R)は行列の乗法のもとで群をなすわけですが,その行列交換子で定義されるリー代数も同じ行列の集合となり,n×n行列なのでそのベクトル次元はn^2です.また,n×n複素行列GL(n,C)において,複素数は2つの実数で定義されるので,そのリー代数は2n^2次元をもつことになります.
n次元直交群O(n)はA^(-1)=A’を満たす行列の集合をなし,その行列式は±1となります.O(n)のリー代数は反対称行列からなるので,次元はn(n−1)/2であることが示されます.
O(n)において行列式が+1であるものは特殊直交群SO(n)なのですが,とくに,A’A=E,|A|=1を満たす3×3正方行列Aは特殊直交群SO(3)をなします.これは3次元空間の回転を表す群となります.なお,球面上の運動の有限群については5つの回転群(巡回群,正2面体群,正4面体群,正8面体群,正20面体群)=広義の正多面体群に限られることはよく知られています.→[補]
ユニタリー群U(n)は,複素共役をとって転置することを意味する(エルミート共役)~を用いて,A^(-1)=A~を満たす行列の集合です.U(n)のリー代数はn×n反エルミート行列(A~=−A)ですから,n(n−1)/2個の複素数の非対角要素とn個の純虚数の対角要素からなるため,全体でn^2実次元をもちます.
n次元特殊ユニタリー群SU(n)は,U(n)の行列で行列式が1のものです.SU(n)のリー代数はトレースが0の反エルミート行列からなるのですが,トレースが0という条件は自由度を1だけ減らすため,SU(n)のリー代数の次元はn^2−1となります.
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