■対称行列と反対称行列(その12)
[補]4元数と行列
積の交換法則が成り立たない代数として「行列」があります.
E=[1,0] J=[0,−1] J^2=−E
[0,1] [1, 0]
とおけば,
A=[a1,−a2]
[a2, a1]
は
A=a1E+a2J
と表されます.
A=a1E+a2J,B=b1E+b2J
の形の行列全体は加法および乗法に関して閉じています.
A+B=(a1+b1)E+(a2+b2)J
AB=(a1b1−a2b2)E+(a1b2+a2b1)J
乗法の可換性は成立しません.すなわち,[1]節では行列による表現を利用して複素数を導入したわけですが,類似の方法で4元数を行列の中に実現させる方法もあります.
E=[1,0,0,0]
[0,1,0,0]
[0,0,1,0]
[0,0,0,1]
i=[0,−1,0, 0] j=[0, 0,−1,0]
[1, 0,0, 0] [0, 0, 0,1]
[0, 0,0,−1] [1, 0, 0,0]
[0, 0,1, 0] [0,−1, 0,0]
k=[0,0, 0,−1] A=[a1,−a2,−a3,−a4]
[0,0,−1, 0] [a2, a1,−a4, a3]
[0,1, 0, 0] [a3, a4, a1,−a2]
[1,0, 0, 0] [a4,−a3, a2, a1]
とおけば
A=a1E+a2i+a3j+a4k
と書くことができます.
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SU(2)を3次元球面:S^3と同一視するとき,
a+bi+cj+dk → [ a+bi c+di]
[−c+di a−bi]
a=[ a1+a2i,a3+a4i]
[−a3+a4i,a1−a2i]
Aa=[ x1’+x2’i,x3’+x4’i]
[−x3’+x4’i,x1’−x2’i]
とすると,R^4での1次変換は
x1’=a1x1−a2x2−a3x3−a4x4
x2’=a2x1+a1x2−a4x3+a3x4
x3’=a3x1+a4x2+a1x3−a2x4
x4’=a4x1−a3x2+a4x3+a1x4
となりますから,R^4の標準基底による行列表示は
A=[a1,−a2,−a3,−a4]
[a2, a1,−a4, a3]
[a3, a4, a1,−a2]
[a4,−a3, a2, a1]
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以上のように,ハミルトンの4元数をSU(2)行列の一部だと考えて,
a+bi+cj+dk → [ a+bi c+di]
[−c+di a−bi]
のように,4元数と2×2行列を対応させると,4元数の演算はそのまま行列の演算に移行します.さらに,c=d=0の場合を考えると,複素数も行列とみなせるというわけです.
この体系では,4元数同様,
i^2=−E,j^2=−E,k^2=−E,
ij=k,jk=i,ki=j,
ji=−k,kj=−i,ik=−j
なる性質をもっていて,加法および乗法に関して閉じています.また,乗法の可換性は成立しません.
この体系を用いると,
(x^2+y^2+z^2)E=−(xi+yj+zk)^2
(x^2+y^2+z^2+w^2)E=(x+yi+zj+wk)(x−yi−zj−wk)
のように,虚数単位iを陽に用いることなしに2つの行列の積に分解できますが,それでは4元数そのままであって,虚数単位iを使ったパウリ行列やディラック行列よりも面白味に欠けるかもしれません.
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