■対称行列と反対称行列(その10)
物理の世界では,空間の構造の対称性を表すのにリー群がよく使われます.リー群は様々な現象の対称性を記述するための道具といっても差し支えないのですが,現在,リー群・リー代数は,素粒子物理学のゲージ理論,大統一理論において根本的な役割を果たしています.
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【1】リー群
実数や複素数,行列は群の例であって,たとえば,R^nはベクトルの加法により可換群となり,行列は乗法のもとで非可換群をなします.n次の正方行列GL(n)の場合について述べると,GL(n)は行列の乗法のもとで群をなすわけであって,n次一般線形群と呼ばれます.
リー群はノルウェーの数学者リーにちなんでこの名前がある特別な群であって,もともとは多様体の無限小近傍の線形近似(連続群)として考えられたものです.たとえば,絶対値1の複素数
exp(iθ)=cosθ+isinθ
は積を算法としてリー群(パラメータθを連続的に変化させることによって,無限に多くの要素を含んでいる群)となります.その意味で,Xを行列として
exp(iαX)
の形に書くことができるものがリー群なのです.
ところで,古典型リー群には
特殊線形群:SL(n)={X|det(X)=1}
直交群:O(n)={X|X’X=En}
斜交群:Sp(m)={X|X’JmX=Jm}
Jm =[0, Em]
[−Em,0]
などが含まれますが,これらの古典線形群以外の古典線形群をすべて包括するのが単純リー群です.
なお,Sp(m)は四元数と密接な関係があり,
SU(n,K)=SO(n)・・・K=R(実数)
=SU(n)・・・K=C(複素数)
=Sp(n)・・・K=H(四元数)
のような関係になっています.
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