■ゼータ関数と多重ゼータ関数(その20)

 微積の学び初めに,x→0としたとき,

  sinx/x→1

に出会う.この結果は

  (sinx)’=cosx,(cosx)’=−sinx

を示すのに用いられる.

 0<x<π/2のとき,不等式

  0<sinx<x<tanx

が成り立つが,これはx→0としたとき,sinx/x→1の証明に用いられる有名な不等式である.

 この不等式の辺々を2乗して逆数をとると

  cot^2x<1/x^2<1+cot^2x

を得る.x=kπ/(2n+1)を代入して,R=x^2/k^2をかけると

  Rcot^2kπ/(2n+1)<1/k^2<R(1+cot^2kπ/(2n+1))

  RΣcot^2kπ/(2n+1)<Σ1/k^2<RΣ(1+cot^2kπ/(2n+1))

 k=1〜nの和をとると

  Σcot^2kπ/(2n+1)=n(2n−1)/3

より,

  n(2n−1)π^2/3(2n+1)^2<Σ1/k^2<n(2n+1)π^2/3

より,

  Σ1/k^2=π^2/6

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 同様に

  cot^4x<1/x^4<(1+cot^2x)^2

  Σcot^4kπ/(2n+1)=n(2n−1)(4n^2+10n−9)/45

より

  Σ1/k^4=π^4/90

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 アペリは中央二項係数を用いたζ(3)の表示式

  ζ(3)=5/2Σ(−1)^n+1/n^3(2n,n)

を用いて,ζ(3)の無理性を示した.

 すでに無理数とわかっているζ(2),ζ(3),ζ(4)と同様

  ζ(5)=Σ1/k^5

も無理数と思われているが,まだ証明されていない.

 ロシア人数学者ズディリンは,ζ(5),ζ(7),ζ(9),ζ(11)の4実数のうち,少なくともひとつは無理数であることを証明した.

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