■円錐面の輪切り(その28)
円錐面はx^2+y^2=z^2で書けるが、これを平面ax+by+cz=dで切断したときの図形は、zを消去すると
ax^2+2hxy+by^2+2fx+gy+c=0
となり、これが楕円・放物線・双曲線となることはアポロニウスの発見である。
ax^2+2hxy+by^2+2fx+gy+c=0を合同変換
x'=ax+by+c
y'=dx+ey+f
で標準化することができる
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射影曲線
楕円・放物線・双曲線の3種類は射影幾何学の立場では1つのものが見かけ上3種類に分かれて見えるだけである。
直線を直線に移す円板の非ユークリッド幾何学的な射影変換が必要になるが,それは
x’=(ax+by+c)/(ux+vy+w)
y’=(dx+ey+f)/(ux+vy+w)
という形の(実)変換である.分母が共通になる。
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3次曲線
複素数係数の射影変換で、次の3種類のいずれかに変換される。
[1]尖点を有するy^2=x^3
[2]結節点を有するy^2=x^2(x+1)
[3]非特異的3次曲線y^2=x(x-1)(x+λ)
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双有理変換
射影変換をさらに一般化した双有理変換がある。
x’=P(x,y)
y’=Q(x,y)
たとえば、
x’=x
y’=y+x^2
これらは逆に解けて有理変換となる
x=x'
y=y'-x'^2
逆にも解けて有理変換になる射影平面での双有理変換はとくに、クレモナ変換と呼ばれる。
放物線y=-x^2はこの双有理変換で直線y'=0になる
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4次曲線
平面4次曲線をクレモナ変換で分類すると 、次の4種類になる。g:種数、κ:小平次元
[1]g=3,κ=2
[2]g=2,κ=1
[3]g=1,κ=0→クレモナ変換で非特異的3次曲線になる
[4]g=0,κ=−∞→クレモナ変換で直線になる
3次曲線はクレモナ変換でκ=0またはー∞(2種類)
5次以上の曲線はクレモナ変換でκ=2,1,0またはー∞(4種類)
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代数曲面
f(x,y,z)=0で、1次・2次の場合
[1]κ=−∞のとき、有理曲面(q=0),非有理の線織面(q>0)
[2]κ=0のとき、K3曲面、エンリケス曲面(q=0),アーベル曲面(q=1),超楕円曲面(q=2)
[3]κ=1のとき,一般型の楕円曲面
[4]κ=2のとき,一般型の楕円曲面
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【2】射影変換
放物線,楕円,双曲線はまとめて円錐曲線とも呼ばれますが,2次式で定義されるので,2次曲線ともいいます.そして,無限遠点を導入して,考えている曲線を射影曲線として捉えると,2次曲線はひとつのものとして統一的に考えられるようになります(射影幾何).なぜなら,違いは無限遠直線の選び方(無限遠直線と交わらない,接する,交わる)にあるだけであって,どれも同種の曲線と考えることができるからです.
一方,3次曲線は,射影変換を用いれば次のいずれかに変換されます.
(1)y^2=x^3
(2)y^2=x^2(x−1)
(3)y^2=x(x−1)(x−λ)
(1)は「く」の字型曲線で原点で尖点をもちます.(2)は「の」の字型曲線で原点を通ったところでループを描いて自分自身と交差しますから,原点が2重点となります.(3)はループと弓形曲線の2つに分離します.すなわち,(1)(2)は特異点をもち,(3)は非特異です.したがって,滑らかな非特異3次曲線は(3)の形に表せます.これらは特異点による分類といってもよいのですが,射影変換によって互いに写り合う3次曲線は同型とみなされます.
4次曲線(項数15)とか5次(項数21)以上の高次曲線に対しても射影変換を考えることができます.特異点をもつ3次曲線は適当に座標変換(射影変換)すると(1),(2)のどちらかになりましたが,4次曲線では20タイプあります.その後,5次曲線は230余りのタイプに分類されることが示されましたが,n≧6では複雑すぎてよくわからないようです.
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【3】代数曲線の種数と双有理変換
射影変換は高次の曲線に対しては非力なので,より強力な双有理変換を用いて,2次曲線と射影直線とを同一視できるようになれば,それは射影幾何を超えて代数幾何の立場に立つことになります.そして,種数の概念は,曲線の特異点を双有理変換を行って解消できるか否かに依っています.
ところで,曲線上の有理点全体を1つの変数の有理式として表すことのできる曲線を有理曲線といいます.2次曲線は有理点を無限にもつか,1つももたないかのどちらかであって,現在では,2次曲線に1つでも有理点があると実は無限に有理点があることがわかっています.
3次曲線の場合はどうでしょうか? (1)(2)の3次曲線は重根をもち,原点(0,0)が特異点になります.そのため,この曲線上のすべての有理点をパラメトライズすることができます.たとえば,
y^2=x^3 → (t^3,t^2)
y^2=x^2(x−1) → (t^2+1,t(t^2+1))
4次曲線の例も挙げましょう.レムニスケート(双葉曲線)は8の字形(8を90°回転させ横向きにした∞形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2 +y^2 )^2 =(x^2 −y^2 )になります.レムニスケートも特異点をもち,
x=t(t^2+1)/(1+t^4 )
y=t(t^2−1)/(1+t^4 )
のように有理点をパラメトライズすることができます.
一般に,f(x,y)=0が3次式・4次式のとき,その曲線上に特異点と呼ばれる点が存在するかどうかで,曲線のもつ性質が大きく異なってきます.(1)(2)やレムニスケートはそのような例ですが,それに対して,(3)のように,3次曲線が異なる3根をもつ有理係数の多項式の場合は,楕円曲線と呼ばれる非有理曲線で,2次曲線とは本質的に異なってきます.
2次曲線のように有理点全体を1つの変数でパラメータ表示できる曲線を種数が0の曲線(有理曲線)と呼びます.与えられた曲線が有理曲線かどうかを判定するには曲線の種数を求めればよく,それが0なら有理曲線になります.一方,種数が1である曲線に楕円曲線があります.2次曲線はすべて有理曲線ですが,楕円曲線は有理曲線でないことが知られています.すなわち,円錐曲線の有理点は無限ですが,楕円曲線の有理点は有限です.
次数が高いとき曲線は見かけ上複雑になりますが,その曲線の「種数」が小さければ,曲線は双有理変換で簡単なものになります.その意味で,次数よりも種数の方が曲線の本質的な複雑さを表現していると考えられます.
たとえば,モーデル・ファルティングスの定理(1983)とは,「種数が2以上の代数曲線(超楕円曲線)は有理点を有限個しかもたない.」というものです.したがって,有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり,直線(種数0)か,円錐曲線(種数0)か,楕円曲線(種数1)に限られてきます.また,リーマン・フルヴィッツの公式より,フェルマー曲線x^n+y^n=1は種数が(n−1)(n−2)/2で,これはn=3のとき1ですが,n≧4のときは2以上となりますから,そこでフェルマーの予想を征するために必要となるのが楕円曲線であったというわけです.
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【4】代数曲面の分類
空間内の2次曲面の分類もよく知られていて,2次曲面f(x,y,z)=0は楕円面,一葉双曲面,二葉双曲面,楕円放物面,双曲放物面のどれかに分類されます.2次曲面には無数に多くの直線がのっているものがあり,その場合には線織面と呼ばれます.2次曲面が直線の族を含んでいるという事実は建築でも実際に応用されますが,カーブを描いた曲面をコンクリートを使って建設できるということは明らかに利点です.
一方,3次曲面f(x,y,z)=0には,高々27本の直線しか含まないことが証明されています(サルモン,1884年).1次曲面(平面)は∞^2個,2次曲面は∞^1個の直線を含み,一般の3次曲面では(少なくとも1本の直線を含むが)その数は高々有限個(27本)です.それに対して,一般のn次曲面(n>3)は直線を全然含んでいません.
代数曲線は,種数を用いて,有理曲線,楕円曲線,超楕円曲線などに分類されましたが,(極小)代数曲面は,種数と小平次元,不正則数の組合せを使って分類され,K3曲面,エンリケス曲面,アーベル曲面,楕円曲面,超楕円曲面などに分類されることが示されています.
このようにして,1900年当時まで,5次曲線までと3次曲面までのトポロジカルな分類は既に知られていたようです.
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