■ユークリッド原論と多重根号数(その32)
多重根号数といえば
√(1+√(1+√(1+√(1+・・・))))=φ (黄金比)
が有名であるが、 数式と戯れる喜びを知っていたラマヌジャンは,平方根が入れ子状に無限に続く
√(1+2√(1+3√(1+4√(1+・・・))))
の値を求めよという問題をインド数学会誌に投稿している.
[参]カニーゲル「無限の天才」工作舎,p90
しかし,この問題に対する読者からの解答は寄せられず,結局答えたのは出題者であるラマヌジャン本人であったとのことである.今回のコラムではラマヌジャンのクイズを取り上げることにしたい.
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【1】ラマヌジャンのクイズ
ラマヌジャンのクイズの前に,もし,
√(1+a√(1+a√(1+a√(1+・・・))))
の値はという問題であれば,
x=√(1+a√(1+a√(1+a√(1+・・・))))
とおくと,
√(1+ax)=x → x^2−ax−1=0
より,
x=(a+√(a^2+4))/2
を得ることができる.
a=1のとき,
√(1+√(1+√(1+√(1+・・・))))=φ (黄金比)
ラマヌジャンのクイズ
√(1+a√(1+(a+1)√(1+(a+2)√(1+・・・))))
の値はという問題であれば,
f(x)=√(1+x√(1+(x+1)√(1+(x+2)√(1+・・・))))
とおくと,
√(1+xf(x+1))=f(x)
f(x)^2=1+xf(x+1)
しかし,このような非線形関数等式の一般解を直接求めるのは一般に困難である.たとえば,(その1)で示した超幾何関数経由で初等関数や特殊関数に変換するために,項比f(x+1)/f(x)を調べる方法は適用できない.
そこで,f(1)=1,f(1)=2,・・・などとおいて周期性を調べてみる.するとf(1)=2とおいたときだけ周期性をもつ関数列となる.はじめの数項を計算すると
f(1)=2,f(2)=3,f(3)=4,f(4)=5,f(5)=6,・・・,
これより,すべてのxに対して
f(x)=x+1
であることが推測できるが,数学的帰納法の証明の範疇であろう.
以上より,求める値はf(2)=3である.
√(1+2√(1+3√(1+4√(1+・・・))))=3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
なお,この関数等式を満たすひとつの解は
f(x)=x+1
で与えられるが,
[参]平松豊一「初等数学アラベスク」牧野書店
では他の解があるかどうかを調べ,f(x)=x+1がその唯一の解であることを証明している.
上限・下限を
(x+1)/2<f(x)<2(x+1)
と粗く評価して,その評価を繰り返せば
(x+1)/2^1/2^k<f(x)<2^1/2^k(x+1)
ここで,k→∞とすれば,
f(x)=x+1
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【2】ラマヌジャンが編み出した数学上の技巧
2次方程式:ax^2+bx+c=0の解の公式は次式で与えられる.
x=(−b±√(b^2−4ac))/2a
根号の中の式を平方数の差とみれば2項に因数分解することができ,以下のようにも表現できる.
x=m2/2m1±{(m2+2√m1m3)(m2−2√m1m3)}^1/2/2m1
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ラマヌジャンは中学時代に根号の中の式を書き換えて
a(a+2)=a√(a+2)^2=a√(1+(a+1)(a+3))
=a√(1+(a+1)√(1+(a+2)(a+3))=・・・
を発見した.ここでa=1とすると求める値が3であることがわかる.
ラマヌジャンはさらにより一般的な恒等式
x+n+a=√(ax+(n+a)^2+x√(a(n+x)+(n+a)^2+(x+n)√・・・)))
を発見している.
ラマヌジャンのクイズは,ここでx=2,n=1,a=0とした場合である.
√(1+2√(1+3√(1+4√(1+・・・))))=3
また,x=2,n=1,a=1とすると
√(6+2√(7+3√(8+4√(9+・・・))))=4
になることがわかる.
[参]平松豊一「初等数学アラベスク」牧野書店
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