■ガウス関数の積分と不等式(その47)
【5】コーシー分布の標本中央値の分布
コーシー分布
f(x)=1/π・α/(α^2+(x−μ)^2)
F(x)=1/π[arctan(x-μ)/α]+1/2
より,中央値x(m+1)の確率密度関数は
g(x)=(2m+1)!/(m!)2π2^2m{1-(2/πarctan(x-μ)/α)2}^mα/(α^2+(x−μ)^2)
となります.
長い積分計算の後,
期待値E[x(m+1)]=μ
分散V[x(m+1)]=α^2/(n+2)(π/2)^2{1+2/(n+4)(π/2)^2+3/(n+4)(n+6)(π/2)^4・・・}
nが十分大きいところでは
V[x(m+1)]=α^2/(n+2)(π/2)^2
これにより標本中央値の分散は標本の大きさnを大きくすると小さくなることが示されました.コーシー分布に従う変数については,標本平均値に関する中心極限定理が成り立たないわけですから,まことに注目すべきことです.
また,コーシー分布の中央値の分布は漸近的に平均μ,分散π^2α^2/4nの正規分布になることも導き出されます.これはα^2/(n+2)(π/2)^2と漸近的に等しくなります.したがって,標本中央値に関する極限定理「母集団のメジアンをμmとすると,メジアンの分布は漸近的に正規分布N(μm,1/{4n[f(μm)]^2})になる」という式は簡単な推定方式ながら,かなりよい推定量を与えてくれることがわかります.
===================================