■ガウス関数の積分と不等式(その42)

 分布の中心位置を表す代表的な特性値が母平均μであり,

  μ=∫(-∞,∞)xf(x)dx

と計算されます.一般に関数f(x)の物理的重心は

  ∫(-∞,∞)xf(x)dx/∫(-∞,∞)f(x)dx

となりますが,確率密度関数f(x)の場合,この分母は1ですから,母平均μは確率分布の物理的重心に相当します.重心では,

  ∫(-∞,μ)xf(x)dx=∫(μ,∞)xf(x)dxが成り立ちます.

すなわち,時計回り,反時計間回りの回転力の釣り合うところが重心になり,天秤棒が平衡を保つ点が母平均というわけです.

 一方,確率分布の広がりの表す特性値の1つが母分散μ2であり,

  μ2=∫(-∞,∞)(x-μ)^2f(x)dx

で計算されます.母分散μ2はしばしばμ2=σ^2と書き表され,母分散の平方根σ=√σ^2は母標準偏差と呼ばれます.母分散は力学との相関でいうと慣性モーメントに対応していて,慣性モーメントが大きいほどまわりにくいが,いったん回りだすととまりにくくなることに対応しています.

 また,平均値まわりの分散は最小であることは簡単に示すことができます.

  ∫(-∞,∞)(x-μ)^2f(x)dx<=∫(-∞,∞)(x-m)^2f(x)dx

すなわち,平均値はそのまわりの分散が最小な点として特徴づけられ,このことから回転運動では重心を中心として回転することが理解されます.

 正規分布:N(μ,σ^2)の式

  f(x)=1/√2πσexp{-(x-μ)^2/2σ^2}

では

  ∫(-∞,∞)xf(x)dx=μ,∫(-∞,∞)(x-μ)^2f(x)dx=σ^2

になりますから,位置母数μ,尺度母数σはそれぞれ正規分布の母平均と母標準偏差の意味をもっていることがわかります.

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