■量子化とラマヌジャンの和(その19)
【補】奇妙な計算
ゼータ関数は複素数へ拡張することができます。ゼータ関数の不思議なところはsをどんな複素数にしても意味をもつという点です。また、Γ(x+1)=xΓ(x)を使えばすべての複素数に対してガンマ関数が意味付けできるようになります。これを解析接続可能といい、実解析関数の変数を複素数に拡張することにより、未知の世界が開けてきます。
たとえば、ζ(s)とζ(1-s)には
ζ(1-s)=π^(-s)2^(1-s)cos(π^s/2)Γ(s)ζ(s)
という対応関係をもっています。ゼータ関数の対称性はガンマ関数の対称性
Γ(s)Γ(1-s)=π/sinπs
に補ってもらうと、さらに
Γ(1-s)ζ(1-s)=Γ(s)ζ(s)
と完全に左右対称な美しい形に書くことができます。
この対称性はs=1/2の軸に関するものですが、ζ(s)の零点がs=-2,-4,・・・,-2n,とs=1/2+itの線上にあるというのが有名なリーマン予想(1859年)です。この予想は一部に素数定理なども含む数学上の最大の難問であって、いまだ未解決です。
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ところが、解析接続により、
ζ(0)=1+1+1+1+・・・=-1/2
ζ(-1)=1+2+3+4+・・・=-1/12
ζ(-2)=1^2+2^2+3^2+4^2+・・・=0
ζ(-3)=1^3+2^3+3^3+4^3+・・・=1/120
ζ(-4)=1^4+2^4+3^4+4^4+・・・=0
正数の無限級数の総和が負や零になって、一見して目がくらんでしまいます。これらの式は現代数論では当然のことのように使われています。普通の意味では無限大になっているはずですが、これらは一体何を意味しているのでしょうか?
これらの計算の仕方を紹介すると
φ(s)=1-1/2^s+1/3^s-1/4^s+・・・=(1-2^(1-s))ζ(s)
より
φ(0)=-ζ(0),φ(-1)=-3ζ(-1),φ(-2)=-7ζ(-2),φ(-3)=-15ζ(-3)
また、
f(x)=1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1-x)
g(x)=xdf(x)/dx=x+2x^2+3x^3+4x^4+・・・=x/(1-x)^2
h(x)=xdg(x)/dx=x+2^2x^2+3^2x^3+4^2x^4+・・・=x(1+x)/(1-x)^2
より
f(-1)=φ(0)=1/2,g(-1)=-φ(-1)=-1/4,h(-1)=-φ(-2)=0
これから
ζ(0)=-1/2,ζ(-1)=-1/12,ζ(-2)=0,・・・
となる。
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