■量子化とラマヌジャンの和(その18)
【ガンマ関数】
Γ(x)=integral(0,∞)t^(x-1)e^(-t)dt x>0
無限積分Γ(x)をxの関数とみてガンマ関数といいます。
Γ(1)=integral(0,∞)e^(-t)dt=1
Γ(1/2)=integral(0,∞)t^(-1/2)e^(-t)dt
ここで、t=u2とおくとintegral(0,∞)e^(-u2/2)du=√π/2(ガウス積分)より
Γ(1/2)=√π
が得られます。
オイラーの第2積分とも呼ばれるガンマ関数Γ(x)には、Γ(x+1)=xΓ(x)の関係があり、次のような漸化式が成り立ちます。
Γ(x+1)=xΓ(x)=x(x-1)Γ(x-1)=・・・・
したがって、xが正の整数nのときにはΓ(n+1)=n!が成り立ち、ガンマ関数は階乗の一般形となっていることがわかります。また、半整数のときには、Γ(n+1/2)=(2n)!/{2^(2n)n!}√πです。なお、ガンマ関数Γ(x)はx>0について微分可能で、x=1.4616321449・・・で最小となります。
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(ガンマ関数と超球との関係)
ガウス積分
I=integral(-∞,∞)exp(-x2)dx=√π
をn次元に拡張し、
I=integral(-∞,∞)exp(-x12+x22+・・・+xn2)dx1dx2・・・dxn
を考えるとintegral(-∞,∞)exp(-x2)dx=√πより、直ちに
I=π^(n/2)
を得ることができます。
ここで、n次元ガウス積分を別の方法で求めてみます。球に相当するn次元の図形を超球と呼びます。n次元単位超球{x12+x22+・・・+xn2≦1}の体積をvnとすると、v1=2(直径),v2=π(面積),v3=4π/3(体積)はご存知でしょう。
半径rのn次元球の体積はvnr^n,表面積はrVnr^(n-1)となります。ガウス積分の被積分関数を原点を中心とする半径rの球面上で積分し、次にr=0からr=∞まで積分します。半径rの球面上で被積分関数は一定値exp(-r2)をとり、表面積はnVnr^(n-1)ですから、
I=integral(0,∞)exp(-r2)nVnr^(n-1)dr
=nVnintegral(0,∞)r^(n-1)exp(-r2)dr
z=r2と変数変換するとdz=2rdrより
I=nVn/2integral(0,∞)z^(n/2-1)exp(-z)dz
=Vnn/2Γ(n/2)
=VnΓ(n/2+1)
したがって、
Vn=π^(n/2)/Γ(n/2+1)
を得ることができます。これは形式的に
Vn=π^(n/2)/(n/2)!
と書くことができます。
nが整数のとき、実際にこの値を計算してみると、超球の体積はn=5のとき最大5.26・・・となり、以後は減少します。
1次元 2次元 3次元 4次元 5次元 6次元
2 3.1 4.1 4.9 5.263 5.1
(次元を整数に限らなければ5.256次元で最大となり、そのときの体積は5.277・・・である。)また、これより、d次元単位超立方体[-1,1]^dにおいて、単位超球が占める比率は、d=2であればπ/4(79%)であるが、d=5のときは16%に下落し、d=10となると0.25%になることも理解されます。すなわち、高次元において、超立方体内に一様分布する標本を考えるとき、低次元の場合とは対照的に、大部分のデータは超球外に位置することになります。
なお、(n−1)次元の場合の値vn-1がわかればvnは漸加式:
vn/vn-1=Γ(1/2)Γ{(n+1)/2}/Γ(n/2+1)=B(1/2,(n+1)/2)
によって求めることができます。比vn-1/vn-2=B(1/2,n/2)は自由度nのt分布の定数であり、実際、フィッシャーはn個の観測値の標本平均と母平均の差(距離)を標本標準偏差で割った統計量tの分布をn次元ユークリッド空間を使って導きだしています。
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