■量子化とラマヌジャンの和(その12)

【1】ベルヌーイ数

  ベルヌーイ数は,数多くの魅惑的な整数論的特性をもっていて,元来はベキ乗和の公式

  Σk^s=1^s+2^s+3^s+・・・+n^s

を求めるために1713年に考案されたものですが,次のようなベキ級数展開に現れる係数として定義されます.

  x/(1−exp(-x))=1+1/2x+Σ(-1)^(k-1)Bk/(2k)!x^2k

 同じことですが,ベルヌーイ数は

  x/tanhx=xcoshx/sinhx

=1+B1/2!(2x)^2−B2/4!(2x)^4+B6/2!(2x)^6−・・・

 あるいは,x/tanhx=2x/(exp(2x)−1)+xより,

  x/(exp(x)−1)=1−1/2x+B1/2!x^2−B2/4!x^4+B3/6!x^6−・・・

の係数として得られます.

 さらに,ベルヌーイ数を用いたベキ級数展開をいくつか掲げておきます.

a)1/sinh2x=1/tanhx−1/tanh2xより,

  x/sinhx=1−(2^2−2)B1/2!x^2+(2^4−2)B2/4!x^4−・・・

b)1/tanhx=2/tanh2x−1/tanhxより,

  tanhx=2^2(2^2−1)B1/2!x−2^4(2^4−1)B2/4!+・・・

c)tanhix=itanxより,

  tanx=2^2(2^2−1)B1/2!x+2^4(2^4−1)B2/4!+・・・

 母関数は,整数の性質を調べるのにベキ級数の問題(関数論)に翻訳することによって答えを見つけることができる強力な発見手段となっているのですが,これらの式はベルヌーイ数の別の形の母関数表示を与えているものと考えられ,実際,数論的に面白い性質を証明するのに利用することができます.

 

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 ベルヌーイ数が,整数論にとって欠かすことができない存在なのは,ゼータ関数との関係にその理由があり,リーマンのゼータ関数

  ζ(s)=Σ1/n^s=Π(1−p^(-s))^(-1)

とベルヌーイ数との間には,次の公式が成り立ちます.

  Π1/(1−p^(-2m))=ζ(2m)=Bm/2・(2π)^(2m)/(2m)!

 また,どんなBn/nの約数にもならない素数は正則素数と呼ばれるのですが,与えられた素数pの正則性を確かめるためには,クンマーの合同式により,

  1≦n≦(p−1)/2

について,Bnの分子を調べればよいことになります.

 1850年,クンマーはどんなBn/nの分子の約数にもならない素数(正則素数)をベキ指数とする場合に,フェルマーの最終定理を証明して以来,正則素数の判定にも顔を出す興味深い数となりました.(クンマーは円分体の整数論の研究に専念し,正則素数であるすべてのnに対してフェルマー予想が成立することを示したのですが,正則素数pはBp-3 までのベルヌーイ数Bkの分子を割り切ることのできない素数として定義されていて,100以下の非正則素数は37,59,67ですべてですから,この3つの数以外では100までのnに対してフェルマー予想が正しいことが証明されたことになります.)

 Bn/nを既約分数で表したときの分母を求めることは,1840年,クラウセンとフォン・シュタウトの定理により,厳密に求めることが容易になったのですが,Bn/nの分子はnに対して急激に増加するため,計算はずっと難しかしくなります.

 以下に,nが小さいときの表を掲げておきますが,

  Bn/nの分子>Bn/n>4/√e(n/πe)^(2n-1/2)

より,

  (n/πe)^(2n)

のオーダーとなりますから,n>πe=8.539・・・のとき,分子は急激に大きくなることが示されます.

 

  n  Bn/nの分子  n  Bn/nの分子

 ≦5    1      9     43867

  6   691      10    174611

  7    1      11     77683

  8   3617      12   236364091

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