■準正多面体の組み合わせ論(その31)

 フェドロフの平行多面体とは平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体であって,平行辺(したがって平行四辺形面,平行六辺形面に限られる),平行面から構成されている多面体である.フェドロフの平行多面体には立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体の5種類しかないことが証明されている(1885年).

 平行多面体による空間充填形はもっと高い次元の立方格子の3次元への射影になっている.平行多面体のうち14面体は切頂8面体だけであるが,切頂八面体には6組の平行な辺があり,6次元立方体と相同と考えることができる.切頂8面体(f=14,d=6)の辺を点に縮めることによって,長菱形12面体(f=12,d=5)→菱形12面体(f=12,d=4),6角柱(f=8,d=4)→立方体(f=6,d=3)ができる.すなわち,6角柱,菱形12面体は4次元立方体,長菱形12面体は5次元立方体,切頂8面体は6次元立方体を3次元空間に投影したものとなっていて,空間充填図形の基本形は切頂8面体と考えることができる.

 平行多面体5種は6次元立方体の投影図から適当に線を間引いくことによって得ることができるのであるが,この方法は菱形n(n−1)面体の一部の辺を平面上に押しつぶすことと等価である.菱形のすべての稜は2方向,菱形六面体のすべての稜は3方向,菱形十二面体では4方向,菱形三十面体では6方向,菱形二十面体では5方向,菱形十二面体(第2種)では4方向を向いている.

切頂8面体      ←→  6次元立方体 ←→ 菱形三十面体

長菱形12面体    ←→  5次元立方体 ←→ 菱形二十面体

菱形12面体・6角柱 ←→  4次元立方体 ←→ 菱形十二面体(第2種)

立方体        ←→  3次元立方体 ←→ 菱形六面体

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【1】位相幾何学的菱形30面体

 この対応により,たとえば,菱形30面体の一部の辺を平面上に押しつぶすことにより切頂八面体に変形することができる.逆にいうと,切頂八面体の六角形面を菱形に3分割することによって,位相幾何学的には菱形30面体と等価になる.

 写真は,中川宏さん製作の位相幾何学的菱形30面体である.

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【2】位相幾何学的正12面体(ヒルベルト)

 立方体の正方形面を2分割するのであるが,その際,分割方向を直交3方向にとると,位相幾何学的には正12面体と等価になる.

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【3】位相幾何学的正20面体(コクセター)

 立方八面体の正方形面を2分割するのであるが,その際,分割方向を直交3方向にとると,位相幾何学的には正20面体と等価になる.

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