■準正多面体の組み合わせ論(その26)
今度、高校生相手の多面体講義を行うこととなった。ほとんどの高校生は正多面体について、オイラーの多面体公式
f0-f1+f2=2あるいはf0-f1+f2-f3=1
を実験的に確かめたことがあると思われる。しかし、切頂20面体くらいになると頂点数や面数は数えられたとしても辺数を数えることは面倒であり、この段階で放棄してしまうに違ない。
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[1]切頂八面体
切頂八面体は正八面体の辺の3等分点で切頂を施した準正多面体である。正八面体のfベクトルf=(6,12,8)は既知とするが、正八面体の頂点の位置に正方形ができるため頂点数は4x6=24,辺数は4x6に正八面体の12辺が加わり36,面数は正方形面6に元の正八面体の8面が加わり14となるから
f0-f1+f2=24-36+14=2
となる。
f=(24,36,14)を行列で表現すると
[4,0,0][ 6]
[4,1,0][12]
[1,0,1][8]
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[2]立方八面体
切頂八面体は正八面体の辺の中点で切頂を施した準正多面体である。正八面体の頂点の位置に正方形ができるため頂点数は4x6=24であるが,12個が重複して数え上げられているため、頂点数は4x6-12=12,辺数は4x6=24で八面体の12辺はしょうしつしているため加わらない。面数は正方形面6に元の正八面体の8面が加わり14となる。
f0-f1+f2=12-24+14=2
f=(12,24,14)を行列で表現すると
[4,1,0][ 6]
[4,0,0][-12]
[1,0,1][8]
切頂八面体の3x3行列と比較すると数値は同じであるが2列目が1つ上にシフトしている。また、2行目の12に負号がついていることに留意.
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2円または3円が交わったヴェン図を描いたことがあるだろう.2円の場合,共通部分がひとつできるが,3円の場合は2円の共通部分が3つ,3円の共通部分がひとつできる.
中学・高校で4円以上が取り扱われることはまずないが,n円となっても原理は同じである.それは,共通部分に含まれるものを引いて,引き過ぎた分を足し直してということを繰り返す包除原理である.立方八面体のfベクトルを求めるために2列目が1つ上にシフトし、2行目の12に負号がついているのは、数え上げの補正を行っているのである。
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切頂八面体は補正不要、立方八面体は要補正なのであるが、補正の要・不要は切頂の深さによる。立方八面体では切頂が辺の中点を超えてしまうので重複が生じるための補正は必須のものとなる。準正多面体の中には切頂のほかに切稜が必要なものもあるが,切稜は面の中心を超すことはないので補正不要である。
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コクセター・ディンキン図は準正多面体の設計図である。それにしたがって数え上げと補正を行えば(準正多面体の形がわからなくても)fベクトルの計量が可能になるのである。
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