■ガウス関数の積分と不等式(その23)
2項分布は正規分布で近似されるというのが,ド・モアブル=ラプラスの定理ですが,2項分布において,nが十分大きくpが小さい値をとるならば,それはポアソン分布で近似されます.
(証明)2項分布において,母平均=npを一定の値λに保って,p→0,n→∞にしてみましょう.2項分布において,p(x+1)/p(x)という比をつくってみると
p(x+1)/p(x)=(n-x)/(x+1)・p/(1-p)
p→0,n→∞であれば,有限のxに対しては
p(x+1)/p(x)≒np/(x+1)
また,テイラー展開より,p(0)=(1ーp)^n≒exp(-np)
これらの結果を組み合わせれば,p(x)=(np)^x/x!exp(-np)
したがって,極限では
p(x)=exp(-λ)λ^x/x! x=0,1,2,・・・
になります.これはポアソン分布を示す式にほかなりません.
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p→0,n→∞ですから,ポアソン分布とは1回の試行では稀にしか起きない現象の非常に多くの試行での生起回数の分布モデルと解釈できます.
ポアソン分布にはパラメータは1個しかなく,また,ポアソン分布では母平均と母分散が等しくなります(平方根則の根拠となるものである).
母平均=λ
母分散=λ
ということは母平均が決まれば分布の形が決まってしまうことを意味しています.平均値が既知の分布はポアソン分布で近似できるのだが,ポアソン分布するデータの取り扱い安さも取り扱い難さもここに端を発しているのです.
[補]ポアソン分布は母数がひとつしかない独特の分布なのである!
なお、ポアソン分布は稀に起こる事象に適用されるため,一般にnpが5以下の非対称性のいちじるしい分布がすぐ連想されますが,npがもっと大きい領域にまで利用しても差し支えない.そして,λが大きくなれば分布の形は次第に対称的な形になり,正規分布に近づく(ポアソン分布のガウス近似).なお,変動係数の平方は
μ2/μ1^2=1/λ=1/np
というきわめて簡潔な形となります.
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