■積分可能な数(その17)

【3】超幾何関数の例

 ガウスは,1812年に超幾何級数

  F(α,β,γ:x)=1+αβ/γx+1/2!α(α+1)β(β+1)/γ(γ+1)x^2+1/3!α(α+1)(α+2)β(β+1)(β+2)/γ(γ+1)(γ+2)x^3+・・・

について非常に詳細な研究を行っていたことで知られています.

 この形の超幾何関数はガウスの超幾何関数と呼ばれ,

  2F1(α,β;γ:x)

で表されます.また,α,β,γを有理数としたとき,超幾何微分方程式はピカール・フックス型になります.

 オイラーの積分表示によって

  2F1(α,β;γ:x)=Γ(γ)/Γ(α)Γ(γ−α)∫(0,1)t^(α-1)(1-t)^(γ-α-1)(1-xt)^(-β)dt

が成り立ちます.

  (1-xt)^(-β)

を2項定理を用いて展開すると

  (1-xt)^(-β)=Σ(-β,n)(-xt)^n=Σ[β]/n!(xt)^n

が得られます.これとベータ関数

  B(a,b)=∫(0,1)t^(a-1)(1-t)^(b-1)dt

を組み合わせることで,オイラーの積分表示が示されます.

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 たとえば,楕円積分に関係した超幾何関数値

  2F1(1/2,1/2,2,1)=4/π

において,この余計な1/πはガンマ関数の相補公式

  Γ(x)Γ(1-x)=π/sinπx

から派生してくるものとも考えられるわけですが,超幾何関数の代数的な変数での特殊値は,1/πを除いて周期となります.

 超幾何関数の代数的な変数での特殊値はふつう超越的ですが,ときどき予期されない代数的値をとることがあります.例をあげると,楕円積分と関わる保型関数

  4√E4(z)=2F1(1/12,5/12;1;1728/j(z))

とのつながりから,ガウスの超幾何関数

  2F1(1/12,5/12;1/2;1323/1331)=3/4・4√11

など,思いもかけないような式が得られています.

 これと似たようなふるまいをする簡単な例は,無限級数(n=0~)

  Σ(n!)^2*3^n/(2n+1)!=4π/3√3

です.一般に,F(x)=Σanx^nとおくと,a0=1で連続する2項の係数比

  an+1/an

が定数となる関数を超幾何関数と呼ぶのですが,この級数の項比は

  an+1xn+1/anxn=3(n+1)^2/4(n+3/2)・x/(n+1)

ですから,

  Σ(n!)^2*3^n/(2n+1)!=a0*2F1(1,1,3/2|3/4)

また,a0=1より

  Σ(n!)^2*3^n/(2n+1)!=2F1(1,1,3/2|3/4)

より,級数Σ(n!)^2*3^n/(2n+1)!は超幾何級数2F1(1,1,3/2|3/4)であると同定されます.

 また,無限級数(n=1~)

  Σ1/{n(2n,n)}=1/2*2F1(1,1,3/2|1/4)=π√3/9

  Σ1/{(2n,n)}=1/2*2F1(1,2,3/2|1/4)={2π√3+9}/27

も同様で,2F1→3F2→4F3→・・・と進んで,現在,一般化された超幾何関数nFn-1が代数的になる条件はボイカーズとヘックマンにより決定されています(1989年).

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