■積分可能な数(その14)

 1761年,ランベルトはπが無理数であることをはじめて示しました.ランベルトの方法は本質的に

  π/4=1//1+1//3+4//5+9//7+16/9+・・・

=1//1+Φk^2//(2k+1))+・・・

と同じ連分数展開によるものでした.

 1873年,エルミートは

  e=1+1/1!+1/2!+・・・+1/n!+・・・

が超越数であることを証明しました.これはリューヴィル数のような人為的に作った数ではない最初の超越数です.

 1882年,πは超越数であることがはじめて示されました.リンデマンは,エルミートの方法を一般化して,πの超越性を証明するのですが,リンデマンの定理(1882年)より,

  e,π,e^(√2),e^α,log2,logβ

   (α,βは代数的数で,α≠1,β≠1)

の超越性が導かれます.

 1900年,ヒルベルトはパリの国際数学者会議において,2^(√2)が超越数であるかどうかを当時の数学の問題のひとつとしました(ヒルベルトの第7問題).この問題は,「0または1でない代数的数αと有理数でない代数的数βに対し,α^βが超越数であることを示せ」というものですが,1934年,ゲルフォントとシュナイダーによって独立に,肯定的に解決されました.

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【1】ゲルフォント・シュナイダーの定理

 その結果,

  2^(√2),e^π,α^β,log102,logba

がいずれも超越数であることが判明しました.

 この定理を逆向きに使うことで,e^πが超越数であることが示されます.

  e^πi=−1

  (e^π)^i=−1

  α=e^π,β=−i

右辺−1は超越数でない.β=−iはx^2+1=0の解なので代数的数である.したがって,α=e^πが代数的数でないことになる.

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 なお,

  e^π=(-1)^(ーi)

は,ゲルフォント・シュナイダーの定理によって超越数なのですが,

  π^e,π^π,e^e

は有理数かどうかもわかっていませんし,π+eは無理数かどうかも知られていません.

  exp(π√163)=640320^3+744

しかしながら,ゲルフォント・シュナイダーの定理より,exp(π√163)は超越数であって,整数にはならないことが証明されます.

  exp(π√163)=262537412640768743.99999999999925007・・・

である.整数との差はわずか1兆分の1未満である.もしこれが整数になったら一大事であるが,見事としかいいようがない.

  exp(π√163)=640320^3+744−ε

  ε=7.5×10^-13

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