■ガウス関数の積分と不等式(その21)

【2】極値の極限分布

 最大値・最小値などの極値の分布は,有限のnについては【1】で与えられましたが,これらの分布はnとともにずれていきます.

 そこで,一様分布の最大値[1]において,

  y(n)=(n+1){x(n)-n/(n+1)}

と変数変換すると,その分布関数はF(x(n))=x^nより

  G(y(n))={(y+n)/(n+1)}^n={1+(y-1)/(n+1)}^n

ですから,n→∞のとき,その極限分布は指数分布

  G(y)=exp(-(1-y))

になることが理解されます.

 また,指数分布の最大値[2]では,

  y(n)=x(n)-logn

とおくと,

  G(y(n))={F(y+logn)}^n={1-exp(-y)/n}^n

ですから,n→∞のとき,その極限分布は

  G(y)=exp(-exp(-y))

すなわち2重指数分布の形に表されます.

  E[y]=γ  (γはオイラーの定数:0.57722・・・)

  V[y]=π^2/6=ζ(2)

 このようにnが大きいとき,漸近的にある位置=尺度モデルに収束するための条件

  {G(x)}^n=G(a+bx)

の解を考えると,n→∞としたときの極値極限分布は,ワイブル分布(指数分布を含む)か2重指数分布(ガンベル分布)の2つのうちどちらかに限られることが証明されています.ワイブル分布は指数分布にしたがう確率変数のベキ乗変換であり,一方,2重指数分布は指数分布にしたがう確率変数の対数変換として導かれる分布です.

 一般の分布について,その極限分布が上にあげた2つの型のいずれかになるというのは非常に有益な結果であり,しかも独立同分布の仮定が多少くずれたとしてもワイブル分布や2重指数分布があてはまることが多いとされています.

 また,分布の裾が軽い場合の最大値の極限分布としては2重指数分布が現れることも知られていて,たとえば,正規分布[3]

  f(x)=1/(2π)^(1/2)exp(-x^2/2)

については,

  y(n)=(2logn)^(1/2){x(n)-(2logn)^(1/2)}

の分布が2重指数分布に近づくことが示されます.

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