■ガウス関数の積分と不等式(その8)

【1】確率変数の和の分布

 x,yが独立な確率変数でそれぞれ確率密度関数f(x),g(y)をもつとします.このとき,z=x+yの確率密度関数h(z)を求めてみましょう.

 やや形式的ではありますが,z=x+y,w=y(x=z-w,y=w)と変数変換して,

(x,y)平面から(z,w)平面の1対1写像を考えてみるとそのヤコビアンは

  J=∂(x,y)/∂(z,w)=|∂x/∂z,∂x/∂w|=|1,-1|=1

   |∂y/∂z,∂y/∂w| |0, 1|

で与えられます.

  dxdy=∂(x,y)/∂(z,w)dzdw

となり,(z,w)の同時確率密度関数p(z,w)は

  p(z,w)dzdw=f(x)g(y)dxdy=f(z-w)g(w)∂(x,y)/∂(z,w)dzdw

したがって,

  p(z,w)=f(z-w)g(w)

が求める同時確率密度関数となります.

 zの確率密度関数は,その周辺分布として与えられますから

  h(z)=∫(-∞,∞)f(z-y)g(y)dy

となります.このhをfとgのたたみ込みまたは合成積(convolution)といい,

  h(z)=f*g(z)

と書きます.まったく同様に

  h(z)=∫(-∞,∞)g(z-x)f(x)dx

ですから,

  h(z)=g*f(z)

すなわち,たたみ込みでは交換法則が成り立ちます.たたみ込みの積分計算は難しくなることがありますが,その場合には掛ける順序を入れ替えて計算すると簡単になります.

 また,h(z)の累積分布関数H(z)は

  H(z)=∫(-∞,z)h(z)dz

  =∫(-∞,∞)g(y)dy∫(-∞,z)f(z-x)dz

  =∫(-∞,∞)g(y)dy∫(-∞,z-y)f(x)dx

  =∫(-∞,z)F(z-x)dG(y)

と表されます.ここで,dG(y)=g(y)dyの関係を利用しました.この場合も,H(z)=F*G(z)=G*F(z)が成り立つことが容易にわかります.

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(例題5)xが正規分布N(μ,a),yが正規分布N(ν,b)にしたがうとき,x+yの分布を求めたい.

 まず,x+yの密度関数は

f(x)=1/√2πσexp{-(x-μ)^2/2σ^2}ですから

h(y)=f(x1)*f(x2)=∫(-∞,∞)f(x-y)f(y)dy

=1/2π(ab)^1/2∫(-∞,∞)exp(-x^2/2a)exp((z-x)^2/2b)dx

=1/2π(ab)^1/2・(2πab/(a+b))^1/2exp(-z^2/2(a+b))

平均az/(a+b),分散ab/(a+b)の正規分布

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