■ガウス関数の積分と不等式(その7)
【1】確率変数の和の分布
x,yが独立な確率変数でそれぞれ確率密度関数f(x),g(y)をもつとします.このとき,z=x+yの確率密度関数h(z)を求めてみましょう.
やや形式的ではありますが,z=x+y,w=y(x=z-w,y=w)と変数変換して,
(x,y)平面から(z,w)平面の1対1写像を考えてみるとそのヤコビアンは
J=∂(x,y)/∂(z,w)=|∂x/∂z,∂x/∂w|=|1,-1|=1
|∂y/∂z,∂y/∂w| |0, 1|
で与えられます.
dxdy=∂(x,y)/∂(z,w)dzdw
となり,(z,w)の同時確率密度関数p(z,w)は
p(z,w)dzdw=f(x)g(y)dxdy=f(z-w)g(w)∂(x,y)/∂(z,w)dzdw
したがって,
p(z,w)=f(z-w)g(w)
が求める同時確率密度関数となります.
zの確率密度関数は,その周辺分布として与えられますから
h(z)=∫(-∞,∞)f(z-y)g(y)dy
となります.このhをfとgのたたみ込みまたは合成積(convolution)といい,
h(z)=f*g(z)
と書きます.まったく同様に
h(z)=∫(-∞,∞)g(z-x)f(x)dx
ですから,
h(z)=g*f(z)
すなわち,たたみ込みでは交換法則が成り立ちます.たたみ込みの積分計算は難しくなることがありますが,その場合には掛ける順序を入れ替えて計算すると簡単になります.
また,h(z)の累積分布関数H(z)は
H(z)=∫(-∞,z)h(z)dz
=∫(-∞,∞)g(y)dy∫(-∞,z)f(z-x)dz
=∫(-∞,∞)g(y)dy∫(-∞,z-y)f(x)dx
=∫(-∞,z)F(z-x)dG(y)
と表されます.ここで,dG(y)=g(y)dyの関係を利用しました.この場合も,H(z)=F*G(z)=G*F(z)が成り立つことが容易にわかります.
===================================
(例題4)パラメータ(α、λ)のガンマ分布の密度関数は
f(x)=λ^α/Γ(α)・x^(α-1)exp(-λx)
である。xがパラメータ(α、λ)のガンマ分布,yがパラメータ(α、λ)のガンマ分布に従い、独立であるならばx+yはパラメータ(α+β、λ)のガンマ分布に従う。
まず,x+yの密度関数は
f(x)=f(x)=λ^α/Γ(α)・x^(α-1)exp(-λx)ですから
h(z)=f(x)*f(y)=∫(0,∞)f(x-y)f(y)dy
=∫(0,∞)λ^α/Γ(α)・(x-y)^(α-1)exp(-λ(x-y))λ^β/Γ(β)・y^(β-1)exp(-λy)dy
=λ^(α+β)exp(-λx)/Γ(α)Γ(β) ∫(0,∞)(x-y)^(α-1)y^(β-1)dy
ここで
∫(-∞,∞)(x-y)^(α-1)y^(β-1)dyがx^(α+β-1)Γ(α)Γ(β)/Γ(α+β)になることを示せばよい
x=duと変数変換するとそれを示すことができる
===================================