【1】ラビノヴィッチの定理
2次方程式
x^2+x+41=0
の解は
x=1/2(-1±√-163)
であり,虚2次体Q(√-163)の理論と深く関係しているのですが,この不思議な性質も類数1に関するラビノヴィッチの定理から説明されます.
一般に,fq(x)が0≦x≦q-2なるすべてのxについて素数となることと虚2次体Q(√d)との関係が,ラビノヴィッチにより示されています(1912年).
[1]d=2,3(mod4)のとき
q=-d
fq(x)=x^2+q
[2]d=1(mod4)のとき
q=(1-d)/4
fq(x)=x^2+x+q
とおきます.
[2]がオイラーの公式に対応しているわけですが,連続する0≦x≦q-2に対してすべて素数になるには
「qが素数で,虚2次体Q(√1-4q)が類数1をもつときに限る.」
というのが,ラビノヴィッチの定理です.
類数1については後述しますが,類数が1となる虚2次体Q(√d)は
-d=1,2,3,7,11,19,43,67,163
しかありません.[2]でd=-163=1(mod4)の場合を考えると,q=41.したがって,
fq(x)=x^2+x+41
となります.このようにして,上の現象は虚2次体Q(√-163)と関係していることがわかります.
同様に,1変数の2次多項式
n^2+n+17
も高い確率で素数を生成しますが,d=-67=1(mod4)の場合を考えると,q=17ですから,虚2次体Q(√-67)と関係しているというわけです.
n^2+n+41(0≦n≦39なるすべてのnについて素数となる)
←→ Q(√-163)
でしたが,以下同様に
n^2+n+17(0≦n≦15) ←→ Q(√-67)
n^2+n+11(0≦n≦9) ←→ Q(√-43)
n^2+n+5(0≦n≦3) ←→ Q(√-19)
n^2+n+3(0≦n≦1) ←→ Q(√-11)
n^2+n+2(0≦n≦0) ←→ Q(√-7)
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