■学会にて(京大数理解析研,その278)

【3】平行多面体による周期的空間充填

 平行多面体による3次元空間の充填を考えると,1種類による周期的充填図形すなわち平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体として,立方体,正六角柱,菱形十二面体,長菱形十二面体,切頂八面体があります.以上の5種類を併せてフェドロフ(ロシアの結晶学者)の平行多面体といいます.6角柱,菱形12面体は4次元立方体,長菱形12面体は5次元立方体,切頂8面体は6次元立方体を3次元空間に投影したものと一致しています.

 平行多面体による空間充填は結晶構造と深く関係していて,3次元格子には1848年にブラーベが発見した14種類あり,そして,これから決まる本質的なディリクレ領域(ボロノイ領域)は,ロシアの結晶学者フェドロフの見つけた5種類の平行多面体−−立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体(正6角形4枚と菱形8枚の2種類で作る12面体),切頂8面体−−しかないというわけです.

 これら5種類の図形は5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないのですが,少なくとも同じ程度に重要であると考えられる所以です.なお,2次元格子は5種類あり,それから決まるディリクレ領域も5種類あります.

[補]平行多面体のうち正多面体と同じ対称性をもつ立体は,プラトン立体では立方体,アルキメデス立体では切頂8面体,大菱形立方8面体,大菱形12・20面体,アルキメデス双対では菱形12面体,菱形30面体があります.また,これらの平行多面体から得られるねじれ立体には,正方形からは正4面体,切頂8面体からは正20面体,大菱形立方8面体からはねじれ立方体,大菱形12・20面体からはねじれ12面体があります.

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