■学会にて(京大数理解析研,その275)
5回対称性を示す結晶はあり得ない−−−と少し前までは思われていたのですが,実際に5回対称性を示すものには黄鉄鉱やフラーレンC60,また,ホウ素の単体の中には変わり種がたくさんあり,正20面体上にホウ素原子が12個ずつ結合したものなどがあります.ウィルスや準結晶なども5回対称性が自然界に実在する例です.
少し前までは自然界にあり得ないとされていた正20面体がウィルスや準結晶に実在することがわかったように,存在するのに見落としている形は案外多いのかもしれません.コラム「正多面体の木工製作(その5)」で取り上げたねじれ立方体,ねじれ12面体は他の準正多面体に較べて格段に複雑で,座標の決定や作図も容易ではありませんが,これらの多面体はそれぞれ正8面体群,正20面体群に属し,面角も古典的結晶学の規則にかなっていますから自然界に存在する可能性はあります.
今回取り上げる「花形十二面体」にもその可能性ありかも・・・と思えるのですが,以下に中川宏さん製作の「花形十二面体」の木工模型を掲げます.Mathematica V2,V3のロゴとして双曲空間における正12面体が使われていますが,花形十二面体はそれにそっくりです.
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