■学会にて(京大数理解析研,その254)
菱形十二面体,菱形三十面体は球に外接する(内接球をもつ)のですが,球には外接しないものの合同な菱形だけでできている多面体には,2種類の菱形六面体を除いて実はあと2つ,1885年にフェドロフが発見した菱形二十面体と1960年にビリンスキーが発見した菱形十二面体(第2種)があります.
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【2】菱形多面体
合同な菱形だけでできている多面体について考えます.どのような菱形でも平行6面体を作ることができるのですが,この菱面体には2種類(太った菱面体とやせた菱面体)あって,細めで尖ったほうがacute(扁長菱面体),太めで平たいほうがobtuse(扁平菱面体)と呼ばれています.
ケプラーは複合多面体から菱形十二面体,菱形三十面体を発見し,すべての面が合同な菱形である菱形多面体は,菱形十二面体と対角線の比が黄金比になっている菱形を30個組み合わせてできる菱形三十面体以外にはないことを証明しようとしたのですが,実はあと2つ,1885年,フェドロフが発見した菱形二十面体と1960年にビリンスキーが発見した菱形十二面体(第2種)があります.
菱形三十面体からあるゾーン(菱形の連なった帯)を抜き取って押しつぶすと菱形二十面体,菱形二十面体からあるゾーンを抜くと菱形十二面体(第2種)になるので,これらは各面の対角線の長さの比が黄金比の菱形からなる一連のゾーン多面体と考えることができます.
すなわち,黄金平行多面体は5種類あり,これらはコクセターによりA6(acute),O6(obtuse),B12(Bilinsky),F20(Fedrov),K30(Kepler)と名づけられています.黄金菱形をある方向に平行移動させたものがA6,O6であり,それをさらに平行移動させるとB12が,続いてF20が,最後にK30が生まれます.したがって,A6とO6は3次元の,B12は4次元の,F20は5次元の,K30は6次元の立方体とそれぞれ同等になります.
また,B12の中には2つずつのA6とO6が,F20の中にはひとつのB12と3つずつのA6とO6が(いいかえればF20の中には5つずつのA6とO6が),K30の中にはひとつのF20と5つずつのA6とO6が(いいかえればK30の中には10個ずつのA6とO6が)それぞれ入っていることになります.
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【3】ゾーン多面体の構成
菱形三十面体からあるゾーンを抜くと,菱形二十面体や菱形十二面体(第2種)になるので,これらは各面の対角線の長さの比が黄金比の菱形からなる一連のゾーン多面体と考えることができます.菱形のすべての稜は2方向,菱形六面体のすべての稜は3方向,菱形十二面体では4方向,菱形三十面体では6方向を向いているのですが,菱形二十面体では5方向,菱形十二面体(第2種)では4方向を向くことになります.
一般にすべての稜がn方向を向くとき,面数はf=n(n−1)となります.そのうち,ゾーン面は2枚ずつ増やせるので2(n−1)面,天井面と床面はそれぞれ(n−1)(n−2)/2面で
2(n−1)+2(n−1)(n−2)/2=n(n−1)
という構成になっています.
f=n(n−1)=2,6,12,20,30,42,56,・・・
e=2n(n−1)
v=n(n−1)+2
n ゾーン 天井床 f e v
3 4 2 6 12 8
4 6 6 12 24 14
5 8 12 20 40 22
6 10 20 30 60 32
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