■学会にて(京大数理解析研,その227)

糸健太郎先生(中部大)ご自身は双曲空間のビリヤード問題を取り上げられた。ここでは双曲空間ではなく、ユークリッド空間のビリヤード問題を解説する。

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【1】K・S多面体の表面積

 最も簡単なK・S多面体

  x1=<t>

  x2=<s>

  x3=<1−t−s>

の臨界平面はx1+x2+x3=1であるから,1辺の長さ1の立方体に内接する正四面体になる.1辺の長さ√2の正四面体であるから,表面積は2√3である.

 立方体に正四面体を内接させることができることは,最初ケプラーにより指摘されたことからケプラー四面体と呼ばれる.また,立方体に2個の正四面体を天地逆転させて重ねて内接させた相貫体にはケプラー八角星(星形八面体)という名前がつけられている.ケプラー八角星を通常の多面体としてみると表面積は3√3となるが,ケプラー四面体の相貫体(臨界平面の和集合)としてみると,表面積は2√3×2=4√3となる.

 今回のコラムでは

  x1=<t>

  x2=<s>

  x3=<a−t−s>   (0<a<1)

を取り扱うが,このK・S多面体の相貫体の表面積はaに依存せず,4√3になるという.a→0またはa→1ならば,2重に覆われたケプラー四面体に帰着されるというわけである.

 たとえば,a=1/2の場合の臨界平面は

  x1+x2+x3=1/2   → 1辺の長さ√2/2の正三角形(面積:√3/8)

となるが,

  x1+x2+x3=1/2+1 → 1辺の長さ√2/2の正六角形(面積:6√3/8)

  x1+x2+x3=1/2+2 → 1辺の長さ√2/2の正三角形(面積:√3/8)

を考えることによって,このK・S多面体の相貫体のうち,8枚は正三角形,4枚は正六角形をもつ閉(自己交差)多面体になることがわかる.その表面積は√3×4=4√3である.

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