■学会にて(京大数理解析研,その224)
糸健太郎先生(中部大)ご自身は双曲空間のビリヤード問題を取り上げられた。ここでは双曲空間ではなく、ユークリッド空間のビリヤード問題を解説する。
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【2】正方形ビリヤード問題
クロネッカーの稠密定理は1次元の定理であるが,2次元に拡張することによって長方形ビリヤード問題に幾何学的証明を与えることができる.
正方形のビリヤード台(0≦xi≦1)を考え,点x=(x1,x2)の初期の直線運動を
x1=v1t+a1
x2=v2t+a2
とする.t:時間,初期位置a=(a1,a2),初期速度v=(v1,v2)
東西方向の壁にぶつかるときは南北方向の運動量の向きだけが逆になり,南北方向の壁にぶつかるときには東西方向の運動量の向きだけが逆になる.したがって,どんな軌道であろうと4通りの向きにしかならないのでこの運動は完全に予測可能である.
<x>=|x| (−1≦x≦1のとき)
<x+2>=<x> (すべての実数xについて)
で定義される関数を用いると,初期運動に対するビリヤードボールの運動は
x1=<v1t+a1>
x2=<v2t+a2> (−∞<t<∞)
で表される.
ある位置からある角度でビリヤードの球を発射させると,何回か壁にあたった後,最初と同じ位置・同じ角度で戻ってくる場合がある.n回壁にあった後,同じ状態に戻る場合をn周期軌道と呼ぶことにすると,与えられたnに対して発射角度を求めるというのはおなじみのビリヤード問題であろう.このとき,軌道が閉多角形であるための必要十分条件は,v1,v2が2つの有理数に比例していることである.
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