■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その46)

【3】特性関数を用いた再帰確率の計算

  Durrett: Probability: theories and examples

にある結論だけ示しますと,d次元超立方格子上のランダムウォークにおいては,

  Σu2n=(2π)^(-d)∫(-π,π)Re(1-φ(t))^(-1)dt

    φ(t):特性関数φ(t)

が成り立つというものです.

 とくに,3次元の場合は,

  Σu2n

 =(2π)^(-3)∫∫∫((-π,π)dxdydz/(3−cosx−cosy−cosz

 =(2π)^(-3)∫(-π,π)(1−1/3Σcost)^(-1)dt

 =(√6/32π^3)Γ(1/24)Γ(5/24)Γ(7/24)Γ(11/24)

 =1.51638・・・

と評価され,したがって,

  Σf2n=(Σu2n−1)/Σu2n=1−1/Σu2n

     =0.34053・・・

と計算できます.

 また,

  Kondo and Hara (1987)

の文献からd次元格子上における酔歩の再帰確率pdを引用すると,

d pd d pd

1 1 13 .041919

2 1 14 .038657

3 .340537 15 .035869

4 .193201 16 .033458

5 .135178 17 .031352

6 .104715 18 .029496

7 .085844 19 .027848

8 .072912 20 .026375

9 .063447 30 .017257

10 .056197 40 .012827

11 .050455 100 .005050

12 .045789

 すなわち,3次元と4次元ランダムウォークの再帰確率は,正確には,

  0.340537329550999...

  0.193201673224984...

です.

 再帰確率はdが大きいほど小さくなりますが,dが十分に大きいとき,第1種0次の変形ベッセル関数を使って,

  Σu2n=∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddx

 〜 1+2!/2(2d)+3!/2(2d)^2+4!/2(2d)^3+5!/2(2d)^4+5*71/2(2d)^5+・・・

より,

  pd 〜 1/(2d){1+1/d+7/(4d^2)+35/(8d^3)+215/(16d^4)}

で漸近近似されることがその論文には記されています.

 次元数dが大きければ原点の戻る確率は,およそ

  pd 〜 1/(2d)

ですが,

  1/2(d−1)=1/(2d){1+1/d+1/(d^2)+・・・}

ですから,式

  pd 〜 1/2(d−1)

は簡単な割には漸近確率をよく近似し,

  pd 〜 1/(2d−1) あるいは pd 〜 1/(2d)

よりも外挿した際の誤差が小さいことが理解されます.

===================================