■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その34)

【2】格子空間におけるフーリエ級数展開

格子空間上のフーリエ解析は巧みな方法というよりは,むしろトリックをみせつけられているような気分にさせられるのですが,

 Montroll EW (1956): random walks in multidimensional spaces, especially on periodic lattices, J. Soc. Indust. Appl. Math. 4, 241-260

の(2.11)式はフーリエ解析によって得られたもので,この際,信じることにしましょう.

 

 ともあれ,(2.11)式より(5.1)式

  Σu2n=∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddx

が得られます.したがって,d次元格子上の再帰確率pdは

  pd=Σf2n=1−1/Σu2n

    =1−[∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddx]^(-1)

で与えられます.

 

 また,論文には容易であると書かれているのになぜか導き出せない(5.4)式

  pd 〜 1/(2d){1+1/d+7/(4d^2)+35/(8d^3)+215/(16d^4)}

があります.「容易に・・・」というところが簡単にはいかないのですが,一般の数学の論文・教科書で「容易に」とか「明らかに」と行っている箇所が一番難しいのです.

 

 『変形ベッセル関数I0(x)のx=0の周りでの級数展開

  I0(x)=0F1(1,x^2/4)=

     =1+x^2/4+x^4/64+x^6/2304+・・・+1/(n!)^2(x/2)^2n+・・・

より,∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddxをx=0の周りで,たとえば10項まで項別積分すると

  1+3591/32d^9-77175/256d^8+9555/32d^7-8015/64k^6+355/32k^5+15/4k^4+3/2k^3+3/4k^2+1/2k

 

 次に,漸近展開式を求めるために,

  1−[∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddx]^(-1)

をd=∞の周りで級数展開すれば,

  ・・・+1501/64d^6+215/32d^5+35/16d^4+7/8d^3+1/2d^2+1/2d』

 

 これは論文に一致しています.d≧3のとき,このベッセル関数を展開して項別積分してよいのですが,ここでの議論は級数展開と項別積分の繰り返しとなっています.その際,d=∞の周りで級数展開することに注意します.

 

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