■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その19)

【1】ランダムウォークの母関数

 まず,よく知られている1次元対称単純ランダムウォークの原点復帰の問題について考えることにしましょう.

 原点に戻るのはtが偶数の時に限られるので,2nステップのとき,左右に同じ回数nずつ移動する確率は

  u2n=2nCn/2^(2n)

で与えられます.ここでu0=1,また,奇数回目には戻ることができませんからu2n+1=0とします.

 ここで,unの母関数を

  U(t)=Σunt^n

とおくと,u2n=2nCn/2^(2n)ですから,この級数の項比は

  u2(n+1)t^2(n+1)/u2nt^2n=(n+1/2)*t^2/(n+1)

これより,級数U(t)は超幾何級数1F0(1/2,t^2)であると同定され,

  U(t)=1F0(1/2,t^2)=(1−t^2)^(-1/2)

であることがわかります.

 2項展開からすぐにこの関数を思い浮かべることは困難と思われますが,超幾何関数であると仮定すると上のようにして導き出すことができます.この関数は円周の長さに関係していて

  f(x)=(1-x^2)^(-1/2)

を積分すると,逆正弦関数

  F(x)=arcsin(x)

が得られます.

 また,この関数の特性関数は第1種ベッセル関数J0(x)で表されますが,このことはレイリー分布やライス分布との関連から別の機会にあらためて考察することにします.

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  Σun=U(1)=∞

より1次元酔歩が再帰的であることが導き出されますが,一方,1次元ランダムウォークにおいて,粒子が時刻2nではじめて原点に復帰する確率を求めるのは簡単ではありません.

 実は,

  f2n=u2(n-1)/2n

で与えられるのですが,ここではわからないと仮定して,fnの母関数を

  F(t)=Σfnt^n   f0=0,f2n+1=0

とします.

 原点に戻って来るには,はじめてどこかで原点に戻って,その後,またn回目に戻ってくればよいので,unとfnの間には両者を結びつける重要な公式

  un=Σfkun-k=fnu0+fn-1u1+・・・+f0un

が導かれます.

 ここで,両辺にt^nをかけてnを0〜∞までの和をとれば,左辺からはU(t),右辺からは1+U(t)F(t)が得られますから,このことより

  U(t)=1+U(t)F(t)

すなわち

  F(t)=1−1/U(t)

が成り立ちます.

 これより,名目的には

  fn=(-1)^(n+1)1/2Cn     Σfn=F(1)

と表されることがわかりますが,実質的には

  fn=(2n-3)!!/(2^nn!)

ここで,(2n-1)!!=(2n)!(2^nn!)より,

  fn=u2(n-1)/2n   (n≧1)

が導かれます.

 

 ここで,

  fn=u2(n-1)/2n

が第0項から始まるようにパラメータをずらすと,

  an=u2n/2(n+1)   (a0=1/2)

この級数の項比は

  an+1xn+1/anxn=(n+1/2)(n+1)/(n+2)*x^2/(n+1)

ですから,

  a0*2F1(1/2,1/2,2,x^2)=1/2*2F1(1/2,1,2,x^2)

 また,f0=0,f1=0より,fnの母関数は

  x^2/2*2F1(0,1/2,1,x^2)=x^2/{1+(1-x^2)^(1/2)}

であると同定されます.

 ここで,

  Σfn=F(1)=1

ですから,1次元酔歩は再帰的であることが再確認されたことになります.

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