■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その18)
単純ランダムウォークがd2≦ならば再帰的、d≧3ならば非再帰的であるとは
人間は酔っぱらっても偶然に帰路がみつかるが、鳥が酔っぱらうと永遠に迷子になる可能性があるということである。
===================================
横浜国大・今野紀雄先生より頂いた資料:
Peter Griffin(1990): Accelerating beyond the third dimension: Returning to the origin in simple random walk, Math. Scientist 15, 24-35
の数表をみると,小生が計算した再帰確率
d=3,n=200 → p3=0.32
d=3,n=500 → p3=0.33
d=4,n=100 → p4=0.19
とすべて一致し,私にとっては大満足の結果となりました.また,その文献からd次元格子上における酔歩の再帰確率pdを引用すると,
d pd d pd
1 1 13 .041919
2 1 14 .038657
3 .340537 15 .035869
4 .193201 16 .033458
5 .135178 17 .031352
6 .104715 18 .029496
7 .085844 19 .027848
8 .072912 20 .026375
9 .063447 30 .017257
10 .056197 40 .012827
11 .050455 100 .005050
12 .045789
再帰確率はdが大きいほど小さくなりますが,dが十分に大きいとき,第1種0次の変形ベッセル関数を使って,
Σu2n=∫(0,∞)exp(-x){I0(x/d)}^ddx
〜 1+2!/2(2d)+3!/2(2d)^2+4!/2(2d)^3+5!/2(2d)^4+5*71/2(2d)^5+・・・
より,
pd 〜 1/(2d){1+1/d+7/(4d^2)+35/(8d^3)+215/(16d^4)}
で漸近近似されることがその論文には記されています.
この式では,最初の数項の近似値でも
p1=1,p2=1,p3=0.34,p4=0.20,p5=0.13,p6=0.10
ですから,かなり正確な値がでています.
また,
1/2(d−1)=1/(2d){1+1/d+1/(d^2)+・・・}
ですから,式
pd 〜 1/2(d−1)
は簡単な割には漸近確率をよく近似し,
pd 〜 1/(2d−1) あるいは pd 〜 1/(2d)
よりも外挿した際の誤差が小さいことが理解されます.
===================================