■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その14)
単純ランダムウォークがd2≦ならば再帰的、d≧3ならば非再帰的であるとは
人間は酔っぱらっても偶然に帰路がみつかるが、鳥が酔っぱらうと永遠に迷子になる可能性があるということである。
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さて,ここからはいよいよ対称単純ランダムウォークの再帰性といつかは原点に戻る確率(再帰確率)について考察することにします.
原点に戻るのはtが偶数の時に限られるので,2nステップのとき,左右に同じ回数nずつ移動する確率は
u2n=2nCnp^nq^n
で与えられます.特に,対称(p=q=1/2)のときは,
u2n=2nCn/2^(2n)
また,u2nの母関数をU(t)とおくと,u2n=2nCn/2^(2n)ですから,
U(t)=(1−t^2)^(-1/2)
であることがわかります.
再帰性を判定するのには,たとえば,粒子が出発した点にいる確率がt=∞においても有限の値を示すときは再帰的,また,これは出発した点にいる確率をt=0からt=∞まで積算した量が無限大に発散するときは再帰的と定義できます.前者は強い意味の,後者は弱い意味の粒子の局在を表しています.すなわち,単純ランダムウォークが再帰的であるための必要十分条件は,
Σu2n=∞
が成立することと考えられ,Σu2n<∞のときは再帰しないとします.
ここで,スターリングの公式
n! 〜 √(2πn)n^nexp(-n)
によって,次のウォリスの公式の公式が導かれます.
(2n)!/(2^nn!)^2 〜 (πn)^(-1/2)
これより,
u2n=2nCn/2^(2n) 〜 (πn)^(-1/2)
が示されます.
また,ゼータ関数
ζ(k)=Σ1/n^k
はk≦1のとき発散し,k>1のとき収束しますから,
Σu2n 〜 Σ(πn)^(-1/2)
したがって,1次元の対称単純ランダムウォークは再帰的であることがわかります.
なお,1次元非対称単純ランダムウォークに対しては,まったく同じ方法で, u2n=2nCnp^nq^n=2nCn/2^(2n)(4pq)^n
〜 (πn)^(-1/2)(4pq)^n
4pq<1ですから,u2nは指数的な速さで0に収束します.すなわち,Σu2nは本質的に公比4pq<1の等比級数になり,2項級数展開を用いれば,
Σu2n=(1−4pq)^(-1/2)=1/|p−q|<∞
が得られます.これが収束することから,1次元非対称単純ランダムウォークは非再帰的という結果が得られます.
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