■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その11)
単純ランダムウォークがd2≦ならば再帰的、d≧3ならば非再帰的であるとは
人間は酔っぱらっても偶然に帰路がみつかるが、鳥が酔っぱらうと永遠に迷子になる可能性があるということである。
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引き続いて,1次元格子の代わりに多次元直交格子上の対称単純ランダムウォークを考えてみましょう.時刻0で平面上の原点から出発し,単位時刻ごとに正方格子の上下左右の4つの隣接点に等確率1/4で移動していくのが2次元対称単純ランダムウォーク,立方格子の6つの隣接点に等確率1/6で移動していく粒子の運動が3次元対称単純ランダムウォークです.
2次元対称単純ランダムウォークで,粒子が時刻2nに原点にいると確率は,4項分布において,それまで上下にそれぞれk回,左右にそれぞれn−k回移動した確率ですから,i+j=nとして
u2n=1/4^(2n)Σ(2n)!/(i!)^2(j!)^2
=1/4^(2n)(2nCn)^2
〜 (πn)^(-1)
同様に,3次元対称単純ランダムウォークでは,6項分布において,i+j+k=nとして
u2n=1/6^(2n)Σ(2n)!/(i!)^2(j!)^2(k!)^2
=2nCn/2^(2n)Σ(n!/3^ni!j!k!)^2
〜 C/n^(3/2)
すなわち,2次元の対称単純ランダムウォークは再帰的であるのに対し,3次元対称単純ランダムウォークは非再帰的であるという結果が得られます.
一般に,d次元対称単純ランダムウォークでは,最近接の2d個の点に等確率1/2dで移動し,n→∞のとき
Σu2n 〜 2^(1-d)d^(d/2)(πn)^(-d/2)
したがって,d次元対称単純ランダムウォークは,確率1で出発点に戻れるだろうか? という問いに対しては
a)d≧3のときは非再帰的であって無限の彼方へいってしまう
b)d=1,2のときは再帰的である(すべての道はローマに通ず)
ということを意味しています.しかし,再帰的とはいっても,いつかは原点に帰るということであって,その戻るまでの時間の期待値は∞です.これを零再帰的と呼び,戻れるとはいっても戻りづらいことがわかります.
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