■幾何分布と誕生日の問題(その52)

【3】ハルモスの近似公式

電卓を使ったとしても,[2]の計算はわずらわしいので,概算方法を示しておく.アメリカの数学者ポール・ハルモスによれば,n人が集まっていてそのうちの二人の誕生日が同じになる確率が50%を超えるためには,

  n>1.18×(365)^1/2=22.544

となることが必要であるという.この便利な概算方法がどのようにして見つけられたものなのか考察してみることにする.

 このクイズでは2人が同じ誕生日である確率は1/365と小さいけれども,30人もいれば30人の中から2人を選び出す組合せ数(30C2)は,30×29/2=435通りもあることである.これであれば,同じ誕生日に生まれたペア数の平均値は435/365となるから,一組以上のペアができると期待できるのである.一般に,1年はd日とし,構成員をn人とするとペア数の期待値はn(n−1)/2dになっている.

 このことから

  n(n−1)/2>365 → n>28

としたいところであるが,実際には[1]で述べたように,

  n(n−1)/2>253 → n>23

でよく,23人の中から2人を選び出す組合せ数は

  23×22/2=253

通りあるのである.

 以上のことから,

  n(n−1)/2>log(0.5)/log(1−1/365)

          〜−365log(0.5)

と近似する.左辺の2次式もn^2/2と近似すると,

  n^2>−2log(0.5)×365

  n>(−2log(0.5))^1/2×(365)^1/2

  n>1.17741×(365)^1/2〜1.18×(365)^1/2

 ところで,

  pn=(1−1/d)×(1−2/d)×・・・×(1−(n−1)/d)

において,nがdに比べて小さければ,テイラー展開より

  1−k/d〜exp(−k/d)

  Π(1−k/d)〜exp(−Σk/d)

Σk=n(n−1)/2であるから,

  p〜1−exp(−n(n−1)/2d)

となる.ハルモスの近似公式は

  p〜1−exp(−n(n−1)/2d)>0.5

として

  n(n−1)/2d>−log(0.5)

n^2/2d>−log(0.5)

としたものに等しいというわけである.

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