■幾何分布と誕生日の問題(その31)

【3】ハルモスの概算公式

 電卓を使ったとしても,[2]の計算はわずらわしいので,概算方法を示しておく.

 このクイズでは2人が同じ誕生日である確率は1/365と小さいけれども,30人もいれば30人の中から2人を選び出す組合せ数(30,2)は,30×29/2=435通りもあることである.これであれば,同じ誕生日に生まれたペア数の平均値は435/365となるから,一組以上のペアができると期待できるのである.一般に,1年はd日とし,構成員をn人とするとペア数の期待値はn(n−1)/2dになっている.

 このことから

  n(n−1)/2>365 → n>28

としたいところであるが,実際には(A1)で述べたように,

  n(n−1)/2>253 → n>23

でよく,23人の中から2人を選び出す組合せ数は

  23×22/2=253

通りあるのである.

 以上のことから,

  n(n−1)/2>log(0.5)/log(1−1/365)

          〜−365log(0.5)

と近似する.左辺の2次式もn^2/2と近似すると,

  n^2>−2log(0.5)×365

  n>(−2log(0.5))^1/2×(365)^1/2

  n>1.17741×(365)^1/2〜1.18×(365)^1/2

 ところで,

  pn=(1−1/d)×(1−2/d)×・・・×(1−(n−1)/d)

において,nがdに比べて小さければ,テイラー展開より

  1−k/d〜exp(−k/d)

  Π(1−k/d)〜exp(−Σk/d)

Σk=n(n−1)/2であるから,

  p〜1−exp(−n(n−1)/2d)

となる.

 [3]の結果は

  p〜1−exp(−n(n−1)/2d)>0.5

として

  n(n−1)/2d>−log(0.5)

としたものに等しいというわけである.

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【4】近似のし過ぎ

 ハルモスの概算公式は,cを定数として

  c=(−2log(0.5))^1/2〜1.18

  n>c×(365)^1/2

というものであった.

 さらに,近似を進めて

  p〜1−exp(−n(n−1)/2d)

   〜n(n−1)/2d>0.5

として計算すると,

  n^2>365,n>(365)^1/2,c=1

となって,その誤差は小さくなく精度に問題が生ずる.過ぎたるは及ばざるがごとしというわけである.

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