■ベルヌーイ数とフルヴィッツ数(その3)

 今回のコラムでは整数論的に重要な量であり,実際,重要な役割を果たしているベルヌーイ数とフルヴィッツ数について再掲します.

===================================

【1】ベルヌーイ数

 ベルヌーイ数は

  x/tanhx=xcoshx/sinhx

=1+B1/2!(2x)^2−B2/4!(2x)^4+B6/2!(2x)^6−・・・

 あるいは,x/tanhx=2x/(exp(2x)−1)+xより,

  x/(exp(x)−1)=1−1/2x+B1/2!x^2−B2/4!x^4+B3/6!x^6−・・・

の係数として得られます(母関数,生成関数).

 ベルヌーイ数が整数論にとって欠かすことができない存在なのは,ゼータ関数との関係にその理由があり,リーマンのゼータ関数

  ζ(s)=Σ1/n^s=Π(1−p^(-s))^(-1)

とベルヌーイ数との間には,次の公式が成り立ちます.

  Π1/(1−p^(-2m))=ζ(2m)=Bm/2・(2π)^(2m)/(2m)!

ベルヌーイ数とゼータ関数のこの関係は指数関数exp(z)の性質から,ベルヌーイ数の母関数が周期2πiであることから導かれます.

[補]三角関数は周期2πをもつ一変数一周期の実関数です(sin(x+2π)=sinx).他の周期はその整数倍2nπですから二重周期ではありません.指数関数exp(x)も複素数の世界にはいると,オイラーの等式exp(2πi)=1よりexp(z+2πi)=exp(z)ですから周期2πiをもちますが,これも単周期関数です.複素数変数の単周期関数は,対応点を同一視することによって無限の長さをもつ円筒と見ることができます.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 また,類数とはイデアルと普通の数との比率(自然数)のことで,素因数分解の一意性がどれだけ崩れているかを計る重要な不変量です.Z[ζp]の類数が奇素数pの倍数でなければ,n=pに対してフェルマー装うが成り立つことが証明されたのですが,クンマーはどのような場合にZ[ζp]の類数は奇素数pの倍数になるかという問いに解答を与えました.すなわち,

 「b=2,4,6,・・・,p−3に対して,ベルヌーイ数Bbのいずれかの分子がpの倍数であるときに限り,Z[ζp]の類数は奇素数pの倍数になる.」

[補]ベルヌーイ数を(二重級数でなく)単級数で表わすと

  Bn=(1+[2(2^2n−1)(2n)!/2^2n-1π^2n・Σ(m=1~3n)m^ー2n])/2(2^2n−1)   (Chowla,1972)

===================================

【2】フルヴィッツ数

  tanx=Σ(-1)^(n-1)2^2n(2^2n−1)B2nx^(2n-1)/(2n)! vの展開式は,ベルヌーイ数の別の形の母関数表示を与えています.すなわち,三角関数の展開公式にもベルヌーイ数がでてくるのですが,

  1/sin^2(x)=1/x^2+Σ(-1)^(n/2-1)2^nBn/n・x^(n-2)/(n−2)!

三角関数(円関数)を楕円関数に置き換えても,展開係数はベルヌーイ数と似たような数論的性質をもってくることが予想されます.

 このような考え方は三角関数についての現象を一般化するときの常套手段となっているのですが,その展開係数がフルヴィッツ数Hnです.三角関数の場合のベルヌーイ数

  1/sin^2(x)=1/x^2+Σ(-1)^(n/2-1)2^nBn/n・x^(n-2)/(n−2)!

と対比させると,フルヴィッツ数はワイエルシュトラスの楕円関数のローラン展開

  p(z)=1/z^2+Σ2^nHn/n・z^(n-2)/(n−2)!

で定義されます.

  H4=1/10,H8=3/10,H12=567/130,H16=43659/170,H20=392931/10,

H24=1724574159/130,・・・

 楕円関数は二重周期関数であって,これはドーナツ面(円環面)上の関数と見ることができます.なぜなら,周期平行四辺形の対辺の対応点を同一視することにより,ドーナツ面が作られ,ドーナツ面は環状に並べられた円と考えることができるからです.

 つまり,フルヴィッツ数はベルヌーイ数を単純素朴に一般化したものといえるのですが,

  ζ(4m)=(2ω)^4m/(4m)!・H4m

において,Hmはフルヴィッツ数,ωはレムニスケート周率です.

   ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=1/2B(1/4,1/2)

    =2^(-3/2)π^(-1/2)Γ^2(1/4)=2.62205・・・

レムニスケートの定数ωは円に対するπと同じ役割を演じています.

  π=2∫(0,1)1/√(1-x^2)dx=3.14159・・・(円周率)

  ω=2∫(0,1)1/√(1-x^4)dx=2.62205・・・(レムニスケート周率)

===================================