■学会にて(京大数理解析研,その198)

 ルービック・キューブは1980年から1981年にかけて世界中で大流行した.それでは3×3×3のルービック・キューブではいったいいくつの色の組み合わせが作れるだろうか?

 12!×2^12×8!×3^8通り.しかし,これはルービック・キューブを分解したときの話であって,面の回転だけで実現可能な色の組み合わせの総数は12!×2^12×8!×3^8/12通りになる.

 今日の数学者が群論を説明するためにルービック・キューブを使うように,今回のコラムでは古代ギリシア時代の組み合わせ論,有限数学(離散数学)のパズルを集めてみた.

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【1】アルキメデスのストマキオン

 ピース数をタングラムの2倍の14片とし,14片を並べ替えて正方形にする知恵の板がアルキメデスのストマキオンである.ストマキオンとは腹痛の意味で,腹が痛くなるほど解くのが難しいパズルなのである.

[Q]14片のピースを組み合わせて,正方形に並べる方法はいく通りあるか

[A]14片で何通りの正方形が作れるかというと,実に17152通りの作り方があるという.

 アルキメデスのストマキオンは「パリンプセスト」に収蔵されている.どうしても見劣りがし,だれも気に留めない論文であるが,アルキメデスは与えられた問題に対して可能な解がいくつあるかを計算しようとしていたのではないかと考えられている.古代の組み合わせ論,有限数学(離散数学)というわけである.

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【2】グノーモンについて

 「ユークリッド原論」第2巻に収蔵されているグノーモンについて,阪本ひろむ氏曰く,『グノーモン関連の定理は「幾何学的な代数論」であるととか,いろいろな説(謎)がある.しかし,私が読んで感じのは「つまらない」の一言につきる.「ユークリッド原論」の代数あるいは数論には、「素数は無限に存在する」「ユークリッドの互除法」「√2は有理数ではない」「ピタゴラスの定理」など,非常に貴重で,しかも証明が美しい定理があるのに,なぜこんな議論を「原論」に収録したのだろうか?』

[文献1]ユークリッド原論の翻訳

[1] 中村幸四郎ほか約 ユークリッド原論 昭和46年 共立出版

ギリシア語からの翻訳

  縮刷版も存在

  平行を//といった数学記号を一切使っていない

  原典にある図形は,そのまま掲示

[2] T.Heath 13 Books of Euclud(全2巻か3巻)

  イギリスの碩学による翻訳

  ユークリッドの使わなかった数学記号を使っている

  ソフトカバーのものは入手しやすい

[文献2]数学史

[3] T.L.Hearth A History of Greek Mathematics(2 Vol.)

決定版かな?

[4] T.L.Heath A.Manual of Greek Mathematics (2.Vol.)

[3]の簡略版

[5] 平田他訳 ギリシア数学史 共立出版 1998年(復刻版)

[4]の邦訳

[6] 斉藤憲 ユークリッド「原論」の成立 1997年

  東大出版会

[7] Van Del Wearden 数学の黎明 みすず書房 

  ユークリッド原論の各巻についての解説をふくむ

以上が関連文献である.

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