■亀とプロペラとソロバン珠(その19)
杉本晃久さん(五角形による平面充填の研究者)に1種類のタイルで非周期的タイル張り可能な場合を教えてもらったのは2012年のことであった。付き合わせ条件をもった1つの六角形でaperiodicタイリングを作れる(ただし六角形は鏡映像を使う)のである。
===================================
【2】ジョアン・テイラー
実は,最近まで非周期的に平面をタイル貼りできる図形は,すべて周期的にも平面を充填できると考えられていた.
1964年,非周期的にタイル貼りできるが周期的にはタイル貼りできないタイルの組み(集合)が存在するというバーガーの発見には大きな注目が集まったが,このタイル貼りを実現するのには20000種以上のタイルを必要とした.
その後,ロビンソンはタイルの種類を6つまで減らしたが,1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した,凧と矢(あるいは2種類の菱形)を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものと考えられていた.ところが,・・・
[Q]1個の要素からなる非周期的集合(付き合わせ条件があっても,なくてもよい)があるか?
[A]実は1種類の場合が見つかっています.Joshua E. S. SocolarとJoan M. Taylorが示した非周期六角形タイルは,この問題(Einstein problem)の肯定的な解決になっています.つまり「2個の要素からなる非周期的集合」がペンローズ・タイルであり,「1個の要素からなる非周期的集合」がこの問題の解というわけです.
[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, An aperiodic hexagonal tile, Journal of Combinatorial Theory
18 (2011), 2207-2231.
[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, Forcing nonperiodicity with a single tile, to appear in Mathematical Intelligencer 33 (2011).
非常に単純だが,深淵な数学的発見が今日なお可能である最近の例です.ジョアン・テイラーはタスマニア在住で,ほとんど数学を学んだことのない女性であるという点はマジョリー・ライスと共通しています.
A number of so-called amateurs have discovered really interesting things. A recent example is Joan Taylor, who lives in Tasmania and who has created some beautiful aperiodic hexagonal tilings.
She also has no formal mathematical training, but her work has proven to be most interesting to the aperiodic tiling community.
And she has better insight than most of us into the geometry of these tilings.
===================================