■学会にて(京大数理解析研,その177)
合同な正多面体(p,q)の各面が2つの(p,q)に属し,各辺がr個の(p,q)に属すとしよう.(その2)ではp,q,rに関する1次不等式
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
によって,4次元正胞体は6種類あることを証明したが,2次不等式
p−4/p+2q+r−4/r<12
p−4/p<12−2q−r+4/r
p^2−(12−2q−r+4/r)p−4<0
によっても正則胞体を定めることができるはずである.
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【1】1次不等式による証明
立方体(4,3)の2面角は直角であるから,1本の辺のまわりに4個の立方体で隙間なく空間を充填します.しかし,(4,3,4)では無限の多面体になってしまいますから,超立方体(4,3,3)は有限胞体になります.すなわち,3次元空間内において立方体{4,3}が面を共有しあいながら各辺の周りに4個ずつ集まると3次元立方格子{4,3,4}=無限充填図形となります.
同様に,正4面体(3,3)の2面角は71°より少し小さいので,1本の辺に3,4,5個の正4面体を置くことができます.→(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5)
正8面体と正12面体の2面角は,90°と120°の間にあるので,1辺の周囲には3個の正多面体が置けます.→(3,4,3),(5,3,3) 正20面体の2面角は120°より大きいので,このようなことはできません.
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
結局,正多胞体の可能性としては(3,3,3),(3,3,4),(3,3,5),(4,3,3),(3,4,3),(5,3,3)しかあり得ないことがわかります.
これらを一般的な計量条件式として表すならば,正多面体(p,q)の2面角は,
2sin^(-1)(cos(π/q)/sin(π/p))
このような角r個の和が2πより小さくなくてはならないことから,
cos(π/q)<sin(π/p)sin(π/r)
cos(π/q)<sin(π/p)sin(π/r)≦sin(π/p)
すなわち,
sin(π/2−π/q)<sin(π/p)
より,
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
同様に,
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
が導かれます.
なお,3次元空間充填であるためには,等式
cos(π/q)=sin(π/p)sin(π/r)
が成り立たなくてはならないので,3以上の整数解は立方体による空間充填(4,3,4)だけなのです.
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【2】2次不等式による証明
2次不等式
p^2−(12−2q−r+4/r)p−4<0
において,
(1)q=r=3とおくと
p<(13+√313)/6=5.1153
より,{p,q,r}={3,3,3},{4,3,3},{5,3,3}
(2)q=3,r=4とおくと
p<4
より,{p,q,r}={3,3,4}.なお,{4,3,4}は3次元立方格子になる.
(3)q=4,r=3とおくと
p<(7+√193)/6=3.48・・・
より,{p,q,r}={3,4,3}.
(4)q=3,r=5とおくと
p<(9+√481)/10=3.09・・・
より,{p,q,r}={3,3,3}.
(5)q=5,r=3とおくと
p<(1+√145)/6=2.17・・・
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【補】3次元・4次元・5次元の図形で2辺角・2面角・2体角の和が2πとなってフラットになったとき,2次元・3次元・4次元の無限充填図形となる.
4次元空間において正多胞体{a,b,c}が胞を共有しあいながら各面の周りにd個ずつ集まる4次元空間充填図形を{a,b,c,d}と書くことにすると,これには4次元立方格子{4,3,3,4},正16胞体格子{3,3,4,3},正24胞体格子{3,4,3,3}の3種類がある.
3次元空間を埋め尽くす正多面体は立方体のみである.5次元以上の空間でもn次元立方体のみが空間充填図形となるのに対して,4次元空間の充填図形は多彩である.
また,2種類以上の正多胞体の組み合わせで各辺の周りに一定の状態で集まる空間充填としては,3次元空間内において正4面体と正8面体が交互に集まるものがあるが,この4次元版は正16胞体単独による空間充填{3,3,4,3}となってしまう.4次元以上の空間で2種類以上の正多胞体の組み合わせによる空間充填図形は存在しないことになる.
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