■学会にて(京大数理解析研,その154)

数え上げの講演をもう1題。

ヨハネス・シェンケ先生は自作のプログラムでデルタ多面体の数え上げ問題に取り組まれた。

凸多面体に限定せず、かつ、正四面体を張り付ける形での拡大を認めない場合、元となる原始デルタ多面体は数種類に限定された。この条件で数え上げを行うと、

頂点数9の場合、4通り

頂点数10の場合、12通り、などなど

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【3】デルタ多面体の構成(十分条件)

 デルタ多面体の必要条件はわかりましたが,十分条件を得るには実際に構成してみることになります.正4面体は正三角形の上の単角錐,正8面体は正方形の上の重角錐です.

 また,アルキメデスの正角柱(上下の底面が正多角形で,側面がすべて正方形であるもの)を少しひねって,側面をすべて正三角形にしたものをアルキメデスの反角柱と呼びます.正20面体は側面が10個の正三角形からなる五角反柱の上下の面に正五角錐をつけると構成することができます.

 デルタ4面体,デルタ10面体はそれぞれ正三角形の上の重角錐,正五角形の上の重角錐としてできあがります.

 重角錐として構成できるのはここまでで,デルタ12面体からは角錐の間に正三角形からなる帯をつけて,角錐の傘で上下からフタをすることになります.まず最初に,6個の正三角形からなる三角反柱の帯を作ってみたところ,これは正八面体となるのですが,そこの上下に正三角形のフタをすると正八面体そのものです.そこで,三角反柱の帯に正三角錐でフタをすると,正八面体と正四面体の二面角は互いに補角ですから平行六面体となってしまいます.これは空間充填形となるのですが,デルタ多面体とはなりません.

 次に,8個の正三角形からなる四角反柱の帯を作ってみました.この場合,上下のフタとしては正二角錐(2個の正三角形を辺同士で繋いだものをこう呼ぶことにする)と正四角錐が可能になるのですが,「ポリドロン」では四角反柱の帯が剛性体ではなく変形可能で,これらのいずれも上下の面にうまくはめ込むことができました.正二角錐2個をはめ込むとデルタ12面体,正二角錐と正四角錐ではデルタ14面体,正四角錐2個をはめ込むとデルタ16面体となります.

 このうち,デルタ14面体は側面が正方形の正三角柱(アルキメデスの正角柱)の側面に正四角錐3個をはめ込んだ立体とみることもできて,きれいな対称性を示しています.

 次に10個の正三角形からなる五角反柱の帯ということになるのですが,この場合,正五角錐のフタだけが可能になって,正二十面体ができ上がります.

 最後に,ポリドロンによるf=18の模型を掲げますが,凸体に近いものの凸でない多面体ができあがりました.同じf=18を2つの方向から見た図を掲げます.

 こうしてデルタ18面体は構成不可能であることがわかりましたが,十分条件を満たさないことを直接幾何学的に証明できるかどうかまではわかりませんでした.

 結論をまとめますと,デルタ多面体(正三角面体)は正4面体,正8面体,正20面体も含めて全部で8種類あります.面数の少ない順に並べると4,6,8,10,12,14,16,20面体で,デルタ18面体は存在しません.

   f      e      v

   4      6      4     ○

   6      9      5     ○

   8     12      6     ○

  10     15      7     ○

  12     18      8     ○

  14     21      9     ○

  16     24     10     ○

  18     27     11     ×

  20     30     12     ○

 1942年,フロイデンタールによってこのことが証明されたとあるのですが,f=18(v=11)が十分条件を満たさないことはどのようにして証明されるのでしょうか?

 この点について一松信先生にうかがったのですが,この証明は殊の外厄介ということでした.それは凸多面体という条件がつくためなのですが,結局は頂点数11の形を分類してどのような組でも凸体にならないことを確かめるという手間を要します.f=18の不可能性の証明は端的にいって「あらゆる可能性を調べて凸体にならない」ことを示すような厄介な話でなのです.

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