■こんなところにもチェビシェフ多項式が現れる(その142)
【1】√2の近似値とペル数列
√2は2つの整数の比p/qではないので,√2=p/qすなわちp^2=2q^2になるような2つの整数p,qを見つけることはできません.しかし,誤差±1を許すことにすると
2q^2=p^2±1 (ペル方程式)
なる2つの整数p,qを見つけることができます.
ところで,an=2an-1+an-2という漸化式で生成される数列
1,2,5,12,29,70,169,408,・・・
はペル数列と呼ばれます.これにはおもしろい性質があって,
1^2+1^2=1^2+1
2^2+2^2=3^2−1
5^2+5^2=7^2+1
12^2+12^2=17^2−1
・・・・・・・・・・・・・
このとき,±1は交互に繰り返し現れます.
√2の最良近似値は1/1,3/2,7/5,17/12,41/29,・・・です.このような分数を全部求めるには1/1から出発して1+1=2が次の分母になり,1+2=3が次の分子になる,3+2=5が第3の分母,2+5=7が第3の分子になる,すなわち,1つ前の分数の分子と分母の和が次の分母になり,ひとつ前の分数の分母を2倍したものとその分子の和が次の分子になり,同様に続いていくという算術的な規則があります.
1/1↓ ↑3/2↓ ↑7/5↓ ↑17/12↓ ↑41/29↓ ・・・
すなわち,ペル方程式:p^2−2q^2=±1を満たすp/qがひとつの分数で,P/Qが次の分数だとすると
Q=p+q,P=q+Q=p+2q
P^2−2Q^2=2q^2−p^2=±1
となって,P/QもまたP^2−2Q^2=±1となる分数を与えることができることになります.1/1から始まって次々に解となる分数を見つけることができるというわけです.
p/q→P/Q=(p+2q)/(p+q)
(−1) 1/1<7/5<41/29<239/169<・・・<√2<・・・<577/408<99/70<17/12<3/2 (+1)
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【2】連分数
mを平方数でない自然数とすると,いわゆるペル方程式とは
x^2−my^2=±1(あるいは±4)
で表されるものです.
平方根を無限連分数に表す手順はわかりやすく,たとえば,1<√2<2であるから
√2=1+(√2−1)
=1+1/(√2+1) 2<√2+1<3
=1+1/{2+(√2−1)}
=1+1/{2+1/(√2+1)}
=1+1/{2+1/(2+(√2−1)}
=1+1/{2+1/(2+1/(√2+1)}
=1+1/{2+1/{2+1/{2+1/{2+・・・
の手順を何度も繰り返すことにより,
√2=[1:2,2,2,2,・・・]
ができあがります.
mが小さいときは比較的簡単に求まりましたが,ペル方程式の自然数解を求めることはそれほどやさしくはありません.Q(√199)を考えてみると,199=3(mod4)の素数ですが,
x^2−199y^2=±1
の最小解は
(16266196520,1153080099)
にもなってしまいます.
この解を求めるには√199の連分数展開
√199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]
を用います.9〜28は循環節(周期20)です.
冒頭で述べたことを標準連分数の場合に書き換えますと,
α=[q1,・・・,qn]=Pn/Qn
P0=1,P1=q1,Pn=qnPn-1+Pn-2
Q0=0,Q1=1 ,Qn=qnQn-1+Qn-2 (n=2,3,・・・)
で
PnQn-1−Pn-1Qn=(−1)^n (n=1,2,・・・)
PnQn-2−Pn-2Qn=(−1)^n-1qn (n=2,3,・・・)
が成り立ちます.
また,
α=[q1,・・・,qn-1,qn,qn+1,・・・]
の部分列[qn,qn+1,・・・]に対して
αn=[qn,qn+1,・・・]
なる実数αnを定めると
α=[q1,・・・,qn-1,αn]
=(αnPn-1+Pn-2)/(αnQn-1+Qn-2)
が証明されます.
これに循環連分数になるという性質が加わって,ペル方程式の解が得られるのですが,
√m=[q1,q2,・・・,qn,2q1] (周期n)
αn+1=[2q1,q2,・・・]=√m+q1
より
√m=((√m+q1)Pn+Pn-1)/((√m+q1)Qn+Qn-1)
ここで,
PnQn-1−Pn-1Qn=(−1)^n (n=1,2,・・・)
より,
Pn^2−mQn^2=(−1)^n
となり,ペル方程式の解(Pn,Qn)が得られます.
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【3】最良近似の証明
(Q)分母が≦Qnなるすべての分数のうちで,実数αの近似分数δn=Pn/Qnはαを最もよく近似することを証明せよ.
(A)分数k/とm/nの差は≧1/lnであることに注意.δn<δn-1の場合のみ取り上げるが,a/bはδnに等しくなく,かつ,0<b≦Qnを満足する既約分数であるとする.
δn<a/b<δn-1
とはならないことを証明する.もしそうなっていたとすれば
a/b−δn≧1/bQn,δn-1−a/b≦1/bQn-1
したがって,δn-1−δn>1/QnQn-1となって,矛盾が生じる.
ゆえに,a/b<δnまたはδn-1≦a/bで,いずれにしてもδnのほうがa/bよりもαに近いことになる.
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