■こんなところにもチェビシェフ多項式が現れる(その141)

dは正の整数で,整数の平方にはなっていないとする.このとき,ペル方程式:x^2−dy^2=1について,フェルマーは少なくとも1つの自明でない整数解((x,y)=(±1,0)以外の解が存在するだろうと予想しましたが,この予想は1768年,ラグランジュにより証明されています.

 この方程式は無限に多くの解をもち,基本解(最小の整数解)を(x,y)とおくと一般解は

  ±(x+y√d)^n   n=0,±1,±2,・・・

により与えられます.ペル方程式は√dの最良近似値を次々に生成する所以です.

 基本解の求め方についてはすでに説明したとおりです.今回のコラムではこれらの証明を扱ってみます.

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[Q1](x1,y1),(x2,y2)がx^2−dy^2=kを満足するならば,

  X+Y√d=(x1+y1√d)(x2+y2√d)

で定められる(X,Y)により

  X^2−dY^2=k^2

が満足される.

[A1]X^2−dY^2=(x1+y1√d)(x2+y2√d)(x1−y1√d)(x2−y2√d)=k^2

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[Q2]ペル方程式x^2−dy^2=1は正の整数解をもつ.

[A2]τ1>1であるようなτ1を任意にとる.それに対応して,|y1√d−x1|<1/τ1,0<y1≦τ1となるような(x1,y1)をみつける.これにy1√d+x1<2y1√d+1を辺々掛ければ

  |x1^2−dy1^2|<2√d+1

となる.つぎに,|y1√d−x1|>1/τ2,τ2>τ1をとり,

  |x2^2−dy2^2|<2√d+1

となるような(x2,y2)をみつける.

 明らかに区間(−2√d−1,2√d+1)の中には,0と異なる整数が存在して,x^2−dy^2=kを満足する(x,y)が無限に見出される.この中にはξ1=ξ2,η1=η2(mod|k|)となるような2つの対(ξ1,η1),(ξ2,η2)がある.

 (ξ0,η0)を等式ξ0+η0√d=(ξ1+η1√d)(ξ2−η2√d)で定義すれば,[Q1]より,

  ξ0^2−dη0^2=|k|,ξ1^2−dη1^2=0(mod|k|)

  η0=−ξ1η1+ξ1η1=0(mod|k|)

ゆえに,ξ0=ξ|k|,η0=η|k|,ξ^2−dη^2=1

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[Q3]ペル方程式x^2−dy^2=1を満足する(x,y)のうちで,xが大小(あるいは同じことであるがx+y√dが最小)であるものを(x0,y0)とすれば,ペル方程式x^2−dy^2=1を満足するすべての整数対(x,y)は

  x+y√d=(x0+y0√d)^r

で与えられる.

[A3](x,y)が存在したと仮定すると,適当なrに対して,

  (x0+y0√d)^r<x+y√d<(x0+y0√d)^r+1

となる.(x0+y0√d)^rで割れば,

  1<X+Y√d<x0+y0√d

ここで,(X,Y)は[Q1]より

  X+Y√d=(x+y√d)/(x0+y0√d)^r=(x+y√d)(x0−y0√d)^r

で定義される整数で,X^2−dY^2=1を満たす.

 しかるに,X^2−dY^2=1から不等式0<|X|−|Y1√d|<1が得られるが,1<X+Y√dを考慮すればX,Yは正であることが示される.ゆえに,X+Y√d<x0+y0√dは(x0,y0)が最小であるという定義に反する.

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