■こんなところにもチェビシェフ多項式が現れる(その115)

【1】有限体上の楕円曲線とL関数

 

 まず,整数を法pで考えた有限体Fpの上の3次方程式の群の位数について考察します.係数をFpにもつ3次方程式

  y^2=x^3+ax+b=f(x)

を考えて,非特異であるための必要十分条件は,p≠2,かつ,Fpの元として(mod pで)

   2^2a^3+3^3b^2≠0  

です.

 

 一般論に進む前に,具体例を掲げておきましょう.有限体F5上の非特異3次曲線

  y^2=x^3+x+1=f(x)

について,

  f(0)=1(平方剰余) → y=±1

  f(1)=3(平方非剰余)

  f(2)=11=1(平方剰余) → y=±1

  f(3)=31=1(平方剰余) → y=±1

  f(4)=69=4(平方剰余) → y=±2

ですから,無限遠点を含めて9つの点が見つかります.可換群の構造が入るのは,有限体Fpにおいても同様で,この場合,位数9の可換群となります.

 

 一般のFpについて,Fp={0,1,・・・,p−1}を方程式:y^2=f(x)に代入してみましょう.すると

  (1)f(x)=0なら1つだけの解y=0がある.

  (2)f(x)≠0ならf(x)のとり得る0でない値の半分に対して,yとして2つの解がある.したがって,

  C:y^2=x^3+ax+b=f(x)

の有限体Fpにおける群の位数(元の個数)#E(Fp)は,f(x)の値が平方と非平方に均等に分布していれば,およそp+1個の点が期待できます.

 

 よって,解の個数は,

  #E(Fp)=p+1+(誤差項)=p+1+Mp

の形になることがわかります.

 

  c(p)=−Mp

で定義することにしますが,次の関数

  L(s;E)=Π(1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s))^(-1)

を楕円曲線EのL関数といいます.

 

 この積Πは11以外のすべての素数をわたるのですが,素数をまとめあげたものを「ゼータ」と呼ぶことにすると,2次のゼータになっていることがわかります.すなわち,歴史上最初のゼータであるオイラー積

  ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

は積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,L関数では,p^(-1)の1次式から2次式に進化しているのです.

 

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