■こんなところにもチェビシェフ多項式が現れる(その106)

任意に固定された0≦a≦b≦πに対して,偏角θpが[a,b]となる素数密度は

  2/π∫(a,b)sin^2θdθ

で与えられるだろうという佐藤幹夫予想がたてられています.すなわち,θp=π/2のあたりに多く分布していることを予想しているというわけです.

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【4】佐藤・テイト予想の解決

 角分布がsin^2θに比例するという佐藤予想の最初の記述は,資料によると,昭和38年(1963年)のことなのですが,sin^2予想でt=cosθとおけば,

  偏角が[a,b]となる素数密度 〜 2/π∫(α,β)√(1-t^2)dt

となりますから,これも1種の半円則となっていることがわかります.

 佐藤・テイト予想には,多くの言い換えがあって,

(1)x^2+Mpx+p=0

の解を

  x=√pexp(iθ)=√p(cosθ±isinθ)

とするとき,その角分布はsin^2θに比例する

(2)Mp/2√pが√(1−x^2)に比例する

(3)ハミルトンの4元数環(フルヴィッツの整数):(a+bi+cj+dk)/2の半径pの格子点3次元球面:a^2+b^2+c^2+d^2=4pの一様分布の実軸方向への射影である

といっても同じことです.

 佐藤予想は現在も未解決で,リーマン予想に匹敵する予想であるといわれています.ところが,驚いたことに2006年になって,ハーバード大学のリチャード・テイラーによって佐藤予想の楕円曲線版(佐藤・テイト予想と呼ばれる)が証明されました.佐藤予想そのものの証明ではないにせよ,100年に一度の大発展といえるのです.

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[3]直交性

  ∫(-1,1)Um(x)Un(x)(1−x^2)^1/2dx

 =0     (その他)

 =π/2   (m=n≧0)

[4]母関数

  ΣUn(x)t^n=1/(t^2−2xt+1)  (x≠0)

μ(x)=2/π・(1−x^2)^1/2に関する直交多項式は第2種チェビシェフ多項式

Un(x)=Un(cosθ)=sin(n+1)x/sinx=Π(x-cosjπ/(n+1))

に他ならない。

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佐藤・テイト予想は任意の自然数mに対して

Σ(2cosθp)^2m〜1/(m+1)・(2m,m)π(x)

ΣUm(cosθp)=o(π(x))

が成立することと同値である

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