■階乗からガンマ関数へ(その77)

(1)ガウス積分

 正規分布は一般的な誤差の分布関数で,その確率密度関数,累積分布関数それぞれ

f(x)=1/√2πexp(-x^2/2)=φ(x)

F(x)=∫(-∞,x)f(t)dt=Φ(x)

と表されます.ここでは,正規分布の累積分布関数Φ(x)に関連して,

I=∫(0,∞)exp(-x^2)dx

の値を計算してみます.

 ケルビン卿の銘言に「数学者とは

  ∫(-∞,∞)exp(-x2)dx=√π

を1+1=2のように自明だと思っている人である」とあります.

 われわれは数学者ではないですが,以下のように極座標を用いることによって,簡単に数学者になることができます.

I^2=∫(0,∞)exp(-x2)dx∫(0,∞)exp(-y2)dy(2重積分)

=∫(0,π/2)int(0,∞)exp(-r2)rdrdθ(極座標変換)

より,結局,I=√π/2となります.

 以前より,どうして正規分布に円周率πが現れるか疑問視しておられた方も多いと思いますが,極座標に変換することによって,πが自然に入り込んできます.また,ここでは2重積分を用いてガウス積分を解きましたが,複素積分を用いると,もっと直接的に角度と関係していることが理解されます.ともあれ,πは幾何のみならず,統計にも使われることになります.

 また,上式において,x^2=tとおくと,ガウス積分とガンマ関数との面白い関係

  √π=2I=2∫(0,∞)exp(-x2)dx=∫(0,∞)exp(-t)/√tdt=Γ(1/2)

も得られます.

 なお,逆関数Φ-1(x)については

∫(0,1)Φ-1(x)dx=0

∫(0,1)[Φ-1(x)]^2dx=1

∫(0,1)xΦ-1(x)dx=1/(2√π)

が成り立ちます.

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