■階乗からガンマ関数へ(その75)
【1】ベータ関数族
[1]ガウス積分
正規分布は一般的な誤差の分布関数で,その確率密度関数,累積分布関数はそれぞれ
f(x)=1/√2πexp(-x^2/2)=φ(x)
F(x)=∫(-∞,x)f(t)dt=Φ(x)
と表されます.ここでは,正規分布の累積分布関数Φ(x)に関連して,
I=∫(0,∞)exp(-x^2)dx
の値を計算してみます.
ケルビン卿の銘言に「数学者とは
∫(-∞,∞)exp(-x^2)dx=√π
を1+1=2のように自明だと思っている人である」とあります.われわれは数学者ではありませんが,極座標を用いることによって簡単に数学者になることができます.
I^2=∫(0,∞)exp(-x^2)dx∫(0,∞)exp(-y^2)dy(2重積分)
=∫(0,π/2)int(0,∞)exp(-r^2)rdrdθ(極座標変換)
より,結局,I=√π/2となります.
以前よりどうして正規分布に円周率πが現れるか疑問視しておられた方も多いと思いますが,極座標に変換することによって,πが自然に入り込んできます.また,ここでは2重積分を用いてガウス積分を解きましたが,複素積分を用いると,もっと直接的に角度と関係していることが理解されます.ともあれ,πは幾何のみならず,統計にも使われることになります.
また,x^2=tとおくと,ガウス積分とガンマ関数との面白い関係
√π=2I=2∫(0,∞)exp(-x^2)dx=∫(0,∞)exp(-t)/√tdt=Γ(1/2)
も得られます.
[2]ガンマ関数
Γ(x)=∫(0,∞)t^(x-1)exp(-t)dt (x>0)
この無限積分をxの関数とみてガンマ関数Γ(x)といいます.
Γ(1)=∫(0,∞)exp(-t)dt=1
Γ(1/2)=∫(0,∞)t^(-1/2)exp(-t)dt
ここでt=u^2とおくと,∫(0,∞)exp(-u^2)/2du=√π/2(ガウス積分)より
Γ(1/2)=√π
が得られます.
オイラーの第2種積分とも呼ばれるガンマ関数Γ(x)には,Γ(x+1)=xΓ(x)の関係があり,次のような漸化式が成り立ちます.
Γ(x+1)=xΓ(x)=x(x-1)Γ(x-1)=・・・・
したがって,xが正の整数nのときにはΓ(n+1)=n!が成り立ち,ガンマ関数は階乗の一般形となっていることがわかります.階乗の解析的補間をしている関数がガンマ関数なのです.
[3]ベータ関数
ベータ関数(オイラーの第1種積分)は,
B(a,b)=∫(0,1)t^(a-1)(1-t)^(b-1)dt (t:0-1)
によって定義されます.ここで,積分変数をtからu=(1-t)/tによってuに変えると,
B(a,b)=∫(0,∞)u^(a-1)/(1+u)^(a+b)du (u:0-∞)
が得られます.
ベータ関数とガンマ関数との間には
B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)
の関係がありますから,ベータ関数はガンマ関数の兄弟分にあたります.たとえば,Γ(1/2)=√πを得るにはベータ関数が用いられます.
この関数において,t=sin^2θとおくとdt=2sinθcosθdθですから
B(a,b)=∫(0,1)t^(a-1)(1-t)^(b-1)dt=2∫(0,π/2)sin^(2a-1)θcos^(2b-1)θdθ
ここで,a=1/2,b=1/2とすると
B(1/2,1/2)=2∫(0,π/2)dθ=π
Γ^2(1/2)/Γ(1)=π
Γ(1)=1ですから,Γ(1/2)=√πとなります.
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