■階乗からガンマ関数へ(その73)

【3】ガンマ関数・ベータ関数

  f(x)=1/(1-x^2)^(1/2)

のとき,

  sin^(-1)z=∫(0,z)f(x)dx

ですから,

  2∫(0,1)f(x)dx=3.141592・・・=π

となります.それでは,

  f(x)=1/(1-x^4)^(1/2)

としたとき,

  ∫(0,1)f(x)dx=1.311028・・・=ω

は,どのようにすれば得られるのでしょうか?

 ガンマ関数(オイラーの第2種積分)は,

  Γ(x)=∫(0,∞)t^(x-1)exp(-t)dt

ベータ関数(オイラーの第1種積分)は,

  B(a,b)=∫(0,1)t^(a-1)(1-t)^(b-1)dt

によって定義されます.ベータ関数とガンマ関数との間には,

  B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)

の関係がありますから,ベータ関数はガンマ関数の兄弟分にあたります.

  Γ(1)=1,Γ(1/2)=√π

であることを知っていればたいてい間に合いますが,Γ(1/2)=√πを得るにはベータ関数が用いられます.この関数において,t=sin^2θとおくと

  dt=2sinθcosθdθ

ですから

  B(a,b)=∫(0,1)t^(a-1)(1-t)^(b-1)dt=2∫(0,π/2)sin^(2a-1)θcos^(2b-1)θdθ

ここで,a=1/2,b=1/2とすると

  B(1/2,1/2)=2∫(0,π/2)dθ=π

  Γ^2(1/2)/Γ(1)=π

Γ(1)=1ですから,Γ(1/2)=√πとなります.

 ベータ関数において,a=m/n,b=1/2とおき,t=x^nと置換すると,

  ∫(0,1)x^(m-1)/(1-x^n)^(1/2)dx=Γ(m/n)√π/nΓ(m/n+1/2)

したがって,

 (m,n)=(1,1)のとき,∫(0,1)1/(1-x^1)^(1/2)dx=2

 (m,n)=(1,2)のとき,∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx=π/2

 (m,n)=(1,3)のとき,∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

 (m,n)=(1,4)のとき,∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

が得られます.

  ∫(0,1)1/(1-x^1)^(1/2)dx=2

  ∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx=π/2

は初等的にも得ることができます.一方,

  ∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

は,特別な数と楕円積分を関係づけるものになっています.

 これらを,Γ^q(1/q)の形で統一的に表示すれば,

  Γ^2(1/2)=π=2∫(0,1)1/(1-x^2)^(1/2)dx

  Γ^3(1/3)=2^(4/3)3^(1/2)π∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx

  Γ^4(1/4)=2^5π(∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx)^2

 なお,

  ∫(0,1)1/(1-x^3)^(1/2)dx=Γ^3(1/3)/2^(4/3)3^(1/2)π

を得るには,ガンマ関数の乗法公式(倍数公式)

  Γ(x/2)Γ((x+1)/2)=π^(1/2)Γ(x)/2^(x-1)

と相反公式(相補公式)

  Γ(x)Γ(1-x)=π/sinπx

また,

  ∫(0,1)1/(1-x^4)^(1/2)dx=Γ^2(1/4)/2^(5/2)π^(1/2)

を得るには乗法公式を用いています.

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