■超幾何関数とその歴史展望(その15)

【4】超幾何関数族

 また,

  F(α,γ:x)=1+α/γx+1/2!α(α+1)/γ(γ+1)x2+1/3!α(α+1)(α+2)/γ(γ+1)(γ+2)x3+・・・

の場合を合流形超幾何関数(またはクンマーの超幾何関数)と呼び,1F1(α;γ;x)で表されます.合流という用語は微分方程式の2個以上の特異点が限りなく近づいて,その極限においてより複雑な特異点を生ずる現象を指します.

 そしてガンマ関数はベータ関数から極限操作によって得られ,ベータ関数の一族としてガンマ関数やガウス積分があったように,合流型関数族はガウスの超幾何関数からの極限操作によって次々に得られる関数族で,クンマーの合流型超幾何関数,ベッセル関数,エルミート関数,エアリー関数があります.

 これらの関数はすべて2階微分方程式の解で,積分表示をもっています.これらの関数は積分表示の観点から見ると極めて単純な原理で統一的に扱うことができます.ガウスの超幾何関数の場合はt平面上の4点がありましたが,クンマーの合流型超幾何関数ではt=0,1,∞の3点があり,位置のみの情報をもつ点t=0,1と位置の情報だけでなく,その点に近づいたときに被積分関数が急減少する方向を与えるt=∞があるとみます.それをシンボリックに4の分割2+1+1を対応させます.同様に,ベッセル関数には2+2,エルミート関数には3+1,エアリー関数には4を対応させます.

関数       分割      分割の長さ  パラメータ数

ガウス   (1,1,1,1)    4       3

クンマー  (2,1,1)      3       2

ベッセル  (2,2)        2       1

エルミート (3,1)        2       1

エアリー  (4)          1       0

 このように積分路の取り方によって,ベータ関数族には3の分割,ガウスの超幾何関数族には4の分割を対応させるというわけですが,逆にいうと,自然数nの分割が指定されれば,個々の特殊関数の具体的な形やさまざまな性質が再現できることになるのです.

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