■超幾何関数とその歴史展望(その7)
超幾何関数はふつう超越関数ですが,ときどき代数関数になることがあり,
2F1(-n,1,1,z)=(1−z)^n
はこの例です.
次に代数関数とはならない場合を考えてみることにしましょう.指数関数:y=exp(x)は座標(0,1)を通りますが,点(0,1)がこの滑らかな曲線上の唯一の代数的点であって,自明な点(0,1)を除き代数的点を通ることができません.これが指数曲線や対数曲線が超越曲線と呼ばれる所以なのですが,これ以外のどの代数的点にもぶつからないのは驚くべきことです.
超幾何関数の値は微分方程式のモノドロミー群に深く関わってくるのですが,超越関数となる超幾何関数の代数的な変数での特殊値はふつう超越的です.しかし,
(3)超越関数でありながらも,ときどき予期されない代数的値をとる
ことがあります.
例をあげると,楕円積分と関わる保型関数
4√E4(z)=2F1(1/12,5/12;1;1728/j(z))
とのつながりから,ガウスの超幾何関数
2F1(1/12,5/12;1/2;1323/1331)=3/4・4√11
など,思いもかけないような式がヴォルファルトにより得られています.x座標1323/1331もy座標3/4・4√11も代数的数になるというわけですが,このように自明でない代数的点が存在するのです.
2F1(1/12,7/12;2/3;64000/64009)=2/3・6√253
などもその例ですが,現在,2F1ばかりでなく,一般的な超幾何関数nFn-1が代数的になる条件はボイカーズとヘックマンによりすでに決定されているようです. さらに,超幾何関数の理論はゼータ関数ζ(3)の無理数性を示したアペリの方法のボイカーズにより整理された方法にも登場します.今回のコラムでは,シュワルツの三角群から始まって超幾何関数の値に関するヴォルファルトの発見にいたるまで道筋を中心として紹介したいと思います.
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